06 困惑
「なんだと!?」
整備担当である羽佐間翔子の母、容子からの連絡に史彦は声を荒げた。
「マークゼクスが、出撃した・・」
告げられた通信を復唱する様に遠見真矢の姉、弓子は呟く。
人類軍の接近、フェストゥムの襲来が重なり、一騎達はモニター外での戦闘を余儀なくされている状況の中、出撃許可の出ていない機体が出撃した。
一体誰が?そんな疑問に指令室であるCDC内は騒つく。
招集したパイロット候補者達はシミュレーターですらまともにまだ乗りこなせない。
そんな中、目の前の映像に出されたマークゼクスは、とてもそんな風には見えなかった。
「まさか・・」
史彦の脳裏に最悪のケースが浮かぶ。いや、そんなはずは。だがしかし・・
そんな終わりのない自問自答を繰り返していると、ジークフリードシステムに乗った総士が、マークゼクスに応答を要求する。
「マークゼクス!応答しろ!一体誰が乗っている!」
「・・これで、いいのかな」
聞こえて来た声に、皆が驚き、そして最悪のケースであった事を知る。
「ナマエ・・!」
「ファフナー!?」
そしてジークフリードシステム越しの総士の目にマークゼクスを捉えたとほぼ同時に、一騎もその姿を捉えた。
「なんでファフナーが!?一体誰が乗ってるんだ!総士!」
「それは・・」
声を上げる一騎に、総士は言葉を濁す。
「私だよ、一騎」
「ナマエ!?」
予想外の声に一騎は混乱する。
体調は平気なのか?なぜファフナーに?
いや、それよりも何故彼女はあんなにもファフナーを乗りこなしているのか?
困惑する一騎と同じ様にCDCにいる史彦も動揺していた。
やはり、自分が思った通りだった。絶望と焦りで思考が止まりそうだ。
「ナマエを連れ戻してくれ!」
気付いたら、そう叫んでいた。総士に向けられた史彦の言葉に誰もが肩を揺らし、心境を察した。
「真壁司令、」
「頼む・・っ」
悲痛な史彦の言葉に、皆が視線を向け、総士はその真意を探っていた。
「でなければ・・・っ」
ーーナマエを殺さなくてはいけなくなる。
時にそれは、愛では抗えない。
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