先端恐怖症少年
比嘉 幸宏(ヒガ ユキヒロ)
花の高校2年生
好きなものは苺と刺さる危険のないもの
嫌いなものは蛇と少しでも尖ったやつ
"自称"先端恐怖症の、ごくごく普通の学生である。
―――
朝起きて一番にすること。
それは歯磨き。
眠気で意識がはっきりしない内になるべく素早く歯磨きを済ませる。
何故かと言うと、歯ブラシの先を見ただけで冷や汗が出るからだ。
歯磨きのコツは歯ブラシで恐ろしい妄想に走らないように無心になること。
恐ろしい妄想って言うのは、例えば…喉の奥に刺さったりとか。そんな感じ。
無事歯磨きを終えたら顔を洗って髪の毛を整える。
その後、朝食作り。
両親が揃って海外出張に行ってしまって一人暮らしだから炊事や洗濯なんかは自分でしなきゃいけない。
面倒だけど、仕方ないしそれなりに一人暮らしを満喫している。
それに、孤独ってわけじゃない。
だって…
にゃーぁ
「…おはよ、シラユキ。」
足に身体を擦り付けてくる白い猫の頭をしゃがみ込んで撫でてやる。
一人暮らしを始めてから家にきたシラユキ。今年で1才だ。
捨て猫だったのを拾ってきた。
最初は薄汚れて毛並みも良くなかったけど、今じゃ真っ白でふわふわなそりゃもう美人さん。
愛らしくて、日々の癒しの9割はシラユキだ。
「シラユキもご飯にしような。」
優しく言ってやると「にゃぁー」と甘えるように鳴いて返事を返してくれた。
可愛い。
小さいキッチンに立つと手際良く朝食の準備をする。
シラユキには猫用の餌の詰まった缶詰を開けて中身を器に入れておく。
俺の朝は基本的にパンだ。
箸を使うご飯系は極力避ける。
理由は、歯磨きと一緒。
冒頭で"先端恐怖症"とは言ったけど、実は自称だったりする。
や、尖ったモノは怖い。
指先とか、箸とか刃物系なんて失神ものだ。
条件反射みたいに恐ろしい妄想に走ってしまう。
けど、本当は分かっているんだ。
俺のこの尖ったモノが怖いってのはただ…俺の被害妄想が激しいからってことくらい。
ただ先端恐怖症以外に良い表現が見つからなかったから、名前を借りている。
パンが焼きあがると苺ジャムを大量に塗りたくって食べていく。
苺の程良い酸味がとても美味。
苺が嫌いな奴はきっと人生の6割は損をしてると思うな。うん。
「…ってやっべ!!もうこんな時間!!」
ちょっと味わって食べすぎたらしい。
壁に掛った時計の針は8時15分。
遅刻寸前の時間になっていた。
バタバタと慌ただしく制服に着替えて、シラユキに挨拶してから外に飛び出す。
今日も尖ったモノに遭遇しないで無事に過ごせますように!
これは、そんな"自称"先端恐怖症な俺…比嘉 幸宏の日常である。
END
拍手SSとして一瞬考えたものです。
でもこの後の展開が浮かびませんでした…;