寂しいです。



生徒会副会長、蛹 涙。
彼は幼い頃から極度の貧血を持病に持つ青年である。
医者に貰った薬も効かず、母も貧血が酷かった為遺伝だろうと医者もお手上げ状態になるほど酷い。
少し運動すれば血の気が下がり気を失ってしまうため、いつしかドクターストップで体育も受けられなくなっていた。
そんな彼は、少しでも誰かの役にと一年生の頃生徒会を決める一大イベントの校内人気ランキングで上位に選ばれ、友人達に反対される中生徒会に入った。
一年では書記であったが、今では副会長。
皆の信頼あって今があると、涙はいつも生徒への配慮を忘れない為学校内ではその外見もあり“王子”と呼ばれている。
本人はまったくもって知らないが。



そしてそんな彼が所属する生徒会は、夏休み明けに来た一人の編入生によりいとも簡単に壊されてしまった。


会長以下、もう一人の副会長、会計、書記、第二書記。
涙と辰貴以外の全ての生徒会役員がその編入生に心奪われ、今まではちゃんとしていた仕事も放り出し生徒会室にも来ずに日々編入生争奪戦に現を抜かしているのである。


二人しかいない生徒会室にも、最近生徒会役員が問題を起こしたと言う報告書が度々風紀委員から送られてくる。
その度に涙は言葉にはしないが悲しそうに眉を顰めるのを、辰貴は知っていた。

今までは上手くやっていた仲間たちだ。
けれど、そろそろもう厳重注意でも足りない位になってきている。



「上川くん…、もう…これまでみたいには、戻れないんでしょうか……」


書類の溜まった人気の無い生徒会室を見つめて小さく呟いたあの時の涙の顔を、辰貴は今でも忘れられない。







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