クローバーの花畑 | ナノ

「ぱぱーおきてー」ずしり

そんな可愛らしい声と共に、昼過ぎまで寝ていた俺の体の上に幼女がのしかかってきた。

「…パパ夜遅くまで仕事だったからもう少し寝かせて?」
「やだ!」
「…」

そういえば俺も昔の昔にこんな会話を親父としたことがあったな、と思い出す。

なぜだか知らないが俺は昔女だったらしい。
それが高校生になる春に男になり、そして大学で彼女を胎ましデキ婚。親父に殴られた。
はじめ家出でもしてやろうかと思った。
別に子供は彼女が引き取ってくれるだろうし、親父やおふくろ、兄貴だって俺がいてちゃ世間からどう見られるか…。

でも違った。
親父は勝手に子供を引き取った。
そして俺と離婚させ、兄貴の部下である優秀な人を紹介した。その人はタイミングよく彼女の大学の先輩で、俺の先輩でもあった。
相手はいいと言っているのに慰謝料や出産にかかったお金、全部を負担した。
そして俺に言ったんだ、
「金は返さなくてもいい、でもよく見ておけ親の責任の取り方を、そして覚えろ。お前はそいつの父親だ。もう子供じゃない」

…父親か。


「こーら孫ちゃーん?」ひょい
「!さわるなじじいー!」
「暴れない暴れない〜」
「…親父…」
「パパはお仕事で疲れてるからね〜おじいちゃんと遊ぼうね〜」
「や!」ばちん!
「…大丈夫か…?」
「孫に叩かれるなら本…も…う…」
「…はぁ…」

「よし」
「ぱぱ?」
「パパが小さいころよく遊んでた秘密の場所に連れてってあげよう」
「ほんとに!」
「あぁ。おいで」
「うん!」

「クローバーがいっぱい咲いていて幸せなところだよ」





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