笑わない | ナノ

「はよー…」
「おそよう父さん」
「…まだ12時じゃねーぞ」
「でも11時半でしょ、おそよう」
「はいはいおそようー」

俺の家では遅く起きてくると
「おそよう」
という挨拶が飛び交う。
まぁ挨拶なしじゃないだけいいとは思うが…。

「おま…何見てんの?」
「見て分かんないの、よ●もと」
「いやいや!見て分かるから!」
「…じゃあ聞かないでよ今面白いところだから」

「…お前笑うの?」
ドグシャァア

「父さん失礼にもほどがあるだろ?俺だって笑うぞ」
「ごめんなさい」


「…リビング追い出された…」
あいつが、ねぇ…?

幼稚園の頃は長男もよく笑ってたなー…。
帰ってきたら泥だらけで母さんが洗濯物大変だーってよく喚いてたなぁ…。

「…」

いつからか気づくと長男は「笑う」ということをしなくなった。
無口無表情そして成績優秀。
中学校では一年の後半から生徒会長を務めだした。
そのせいであだ名が「冷徹の生徒会長」「氷の男」。学校の先生に知り合いがいたからすぐに情報を掴めた。

いじめられていないか、何か嫌なことをされたり言われていないかすぐに母さんと一緒に問いただした。
そして返ってきた言葉は
「あなた方二人の子供ですよ」
そういったあいつの口元は少し切れていて、拳が痛々しい程に紅くなっていた。

「あー…嫌なこと思い出した」

そのあとはその生徒が学校に報告したらしく生徒会長を一時期降ろされ、周りからは「ヤンキーの息子」「極道の子」という目で見られた。
そんなことも気にしなかった我が家の長男坊は喧嘩が強く、精神も強く成績優秀、無口無表情な子に育ってしまったわけだが…。

ちら。
「っ、くく…」
「…ふ」

「やっぱ笑った顔は俺にそっくりでイケメンだわ」ぼそり


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