日射病に侵された彼の幸せ



こんなに暑い夏の日には、君を抱き締めたい。
きっと君は「暑苦しい」と言って俺を突き放すだろう。だけど、俺は君を抱き締めたい。
あつくるしいんじゃなくて、“あいくるしい”のさと、俺は君に微笑む。
そうしたら君は照れ笑いして、ばかとかアホとか言ってくるんだ。
でも、そんな悪い言葉は愛の言葉であるってことくらい、俺はわかっているから。そこが日吉のいいところだってことも理解済み。
だから君には安心してほしいかな。
そして、夕立が来る前に、俺は君の手を引いて近くのコンビニまで走ろう。
部活終わりの疲れた時間でも、俺達はそれなりに動ける。君も息を乱れさすことなく付いてきてくれるだろうね。
そこでアイスを買って、狭い屋根の下で二人で冷たいアイスを食べよう。
食べながら、俺達は大雨を見る。遠雷が響き、雨は一層強くなる。
俺は苦笑いをして、止むかなあとつぶやく。そしたら君は短く「通り雨だろ」と答えてくるんだ。
そっか、すぐ去っちゃうのか。でも君は去らないでしょ?
ならいいんだ。
……ああ、そうだ、雨が止んだら俺はまた君を抱きしめよう。
きっと夕立の後には大きな虹がかかるだろうから。
夏の強烈な暑さ、広い空に架かる七色の虹。日吉の心を大きく支配するものを上書きするように、俺は君を抱き締めたい。
再び君は俺を突き放すだろう。でもいいんだ。それが俺の幸せ。


|


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -