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手遅れ
歩「うーん…俺からすると…普通かな。」
翔「じゃねーと困る。手を出したらただじゃおかねーからな。」
歩「どうしてそうなるの、馬鹿なの?」
翔「お前に言われたくねーよ」
翔[叶琉をみて「普通」といった歩に少し安心したけど、この魅力がわからない歩が可哀相とおもう気持ちのほうがつよい。
人は容姿で見るものではない。性格で見るもんだ。
叶琉の性格のよさは類まれなものである。純粋で、しっかりと人の「なかみ」をみていて、素直で。
それでいて男前だ。こんな出来た人間、なかなかいない。]
06歩「んじゃ、俺いくよ。燈馬先輩待ってるし。」
翔「いやぁ、あいつは待ってはいないだろ…」
歩「ばかけるは黙っててよ、まったく」
叶「…終わったか?」
翔「え、叶…塀国?どうして…」
叶「ここに?ってか。お前を捜してたんだよばーか。歩くんだっけ?と話してたから待ってた。」
翔[…これは予想外すぎた。
先ほど確認したときには鞄がなかったので、帰ってたとばかり思っていた。
というか、話しかけてくれればよかったのに。]
翔「鞄なかった」
叶「教材を持って職員室行くの面倒だったから、鞄ごともって行ってた。」
翔「職員室ね…そこまでは見なかったな…」
叶「吉崎に数学教わろうと思ったんだけどいなくてさ…翔に教わろうとおもって。けど、歩くん気づいてたな俺がいたこと。邪魔したかな。」
翔「そんなことない。俺にとって」
叶「そうか、じゃあさ、ここなんだけど」
翔[言わせねぇよ、ってか。まぁいいけど。示されたところを解説していく。
数学は得意じゃなかった。
けど、叶琉が吉崎に聞きに行くのはなんかいやだったから、どこを聞かれても答えられるように勉強した。
そういう努力、きっと叶琉には伝わってないんだろうな…なんか、すごく不憫。]
叶「なーる。さんきゅ、翔。」
翔「いえいえ。…んで?教えてあげたんだからなんか頂戴?」
叶「不良かおまえは」
翔「元不良です」
叶「知ってる。てかあげられるような物がない。」
翔「叶琉を頂戴」
叶「馬鹿か。学校で名前呼びすんな。」
翔「今じゃなくていいから」
叶「…いつだよ」
翔「いつでもいい。俺の隣にいて、俺に叶琉の心を頂戴。」
叶「…だから学校で名前」
翔「叶琉」
翔[え、もちろんわざとです。
たまには積極的に出なきゃさ、本当に下克上される。
呼ばれた名前に、あきれたような顔をして、叶琉は俺をじっと見ていた。]
叶「手遅れ」
翔「…え、どういう意味」
叶「手遅れだよ、翔」
叶「お前の頭はもう手遅れだな。」
翔「え、修復してほしいの?」
叶「いいや、このままでいいよ」
翔「んじゃ、きっともっと壊れていくけど、いい?」
叶「知らん、けど、俺は直す気はないよ、俺も壊れてるから。」
叶「お互いがもう手遅れ」
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