粉雪*戯言

*戯言、零崎/曲識→舞織



雪が降ってる。
キレイな粉雪だ。
手に乗せれば、さらさらと清流のように流れるだろうことが簡単に想像できる。

想像できたなら、次は実行!



「ふあ〜〜、綺麗ですねぇ、曲識お兄ちゃんっ」
「…悪くない」


零崎一族が一人、舞織は先のない手をめいいっぱい広げ、初雪にはしゃいでいた。
殺人鬼とはいえあどけない少女である舞織にとって、初雪、はちょっとしたイベント事だ。
その様子を静かに、そして優しげに見守るのは零崎曲識。
少女のみを殺す、とうたわれる彼も妹は別勘定。
寒空の下に駆け出す舞織に上着とマフラーをかけてやりながら、後に続いた。
その顔は一見無表情に見える。
しかし、曲識を見慣れた者には別だ。


「曲識お兄ちゃんもっ楽しそーですねぇ」
「舞織がそういうなら…悪くない」


微かに、ほんの微かにだが浮かぶのは笑顔。
家族にだけ見せる、妹ができてからは特に妹に見せる、暖かな笑顔だ。
珍しい女性の零崎。
まだ女性というより女の子、な舞織だが、家族はみな舞織を好いている。
殺人鬼としてはまだまだ半人前な舞織を、守ってやりたいと誓うくらいに。


「雪だるま…は無理ですね〜。あ、雪うさぎなら!」
「雪うさぎ…」
「はい!曲識お兄ちゃんも作ります?雪うさぎ」

可愛いですよぉ、と満面の笑みを浮かべる舞織。
その笑顔の方が可愛い…と双識辺りなら抱きしめそうな笑顔を浮かべて、舞織は駆ける。
そして雪が積もり始めた箇所を見つけると、さらさら流れる粉雪に苦戦しながら雪うさぎを作り始めた。

(妹というのも、いいものだ…。
双識の気持ち…わからなくも、ない)

曲識は、周囲に気を配りつつ舞織を優しく見守り続ける。


殺し名、の中ですら忌み嫌われる零崎にも情はある。
もちろん、愛情も。

家族には、あふれんばかりの愛情が。


「曲識お兄ちゃーん、できましたっ」
「…可愛らしいな」
「えへへっ曲識お兄ちゃんにあげますよーぉ。はい!」
「ああ…ありがとう」


粉雪が降りしきる下、柔らかく微笑み合う二人。
曲識は、自分が予想以上に舞織に気持ちを寄せているのを感じた。
それは、下手をすれば“家族”という枠すら越えてしまいそうな愛情…。

「本当に、可愛らしいな」
「曲識お兄ちゃんは、うさぎ好きですか?」


思わず、

「…舞織が好きだ」

漏れてしまうくらい。


「私もっ曲識お兄ちゃんが大好きですよ〜ぉ!」

家族としても愛しているのは違いない。
もう一つの意味は伝わらなくても。


「…悪くないさ、まだ」
舞織が、もう少し大人になったら。


曲識は、舞織から受け取ったうさぎに軽く口づけた。


その口づけはいつか、舞織に。





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