ひより | ナノ

会わせたい人がいる、とカカシさんに言われ演習場へと来ている。
今日お会いするのはどんな方なのか。事前に聞いてもカカシさんは「んーまだナイショ」とにこりと笑うだけで詳しいことは教えてくれなかった。
演習場で会わせたいと言うのなら忍者仲間だろうか。それなら街中でもいい気がするけど一体どんな人物だろう。

辺りを見回してみるけれど、相手はまだ来ていないようだ。
カカシさんはそんなこと気にする様子もなく、演習場の丁度中心地に立ち

「ひよりちゃん、少し離れてて」
「はい」

私が少し距離を置いたのを確認すると、指を組み始めた。おそらく忍術と言われるもの。何回か指を組むと最後に地面に手のひらをつけて叫んだ。

「口寄せの術!」

もわんと白い煙が立ち込め何も見えなくなる。すると時代にぼんやりとした影が一つ、二つ、三つ……と現れた。
煙が落ち着いていくとそこにいたのは八匹のわんちゃん。

「ひよりちゃんに会わせたかったのはこいつらだよ。オレの忍犬たち――八忍犬」
「か、かわいい!」

なんだこの愛らしい子たちは。犬種はさまざまで「へのへのもへじ」と書かれたお揃いのお洋服を着ている。飛びつきたくなる衝動を抑えるのに精一杯だった。

「あの、抱っこしてもいいですか?」
「もちろん」

一番近くにいた小柄なパグ犬を抱き上げる。

「かわいい」
「おまえさんじゃな。この前カカシが必死に助けたがっていたのは」
「しゃ、喋った!?」

腕の中のわんちゃんとカカシさんの顔を見比べる。
カカシさんは楽しそうにニコニコしていた。

「忍犬だからね。喋れるんだよ」
「そうなんですね。びっくりしました」
「その子はパックン。でこっちが……」

カカシさんが一匹ずつ紹介してくれる。みんなオレもオレもと抱き上げて欲しそうに擦り寄って来たので、順番に抱き上げて少しお話しをした。









「この前攫われたいう娘じゃな」
「うん。その節はありがとうね」

ひよりが忍犬たちと戯れる様子を見ながら、カカシとパックンは話をしていた。すっかり忍犬たちに夢中になっているひよりには聞こえていない。

「おまえさんが拙者たちに紹介するということは“そういうこと”なんじゃろ?」
「そういうこと!彼女に何かあったらまた力を貸してもらうことになるからよろしく」

今日の目的は忍犬達にひよりの匂いを覚えてもらうことだった。以前彼女が攫われた時も手伝ってもらったが、雨が降っていたことや彼女の匂いのわかるものが傘しかなかったことから捜索がやや難航した。今後、万が一があった時のために忍犬達と会わせておこうと言うわけだ。その万が一に合わせないために自分がいるわけだが。
今まで彼女はいたことはあっても、わざわざ忍犬たちに会わせようとも思ったことはなかった。こんなことひよりが初めてだ。大切なのだ、彼女のことが。

そんな彼女はいつの間にかブルのお腹に背中を預けて眠ってしまっている。そういえば昨日あまり眠れなかったと言っていた。忍犬たちも彼女の周りで眠ったり寛いだりしている。随分と懐いたようで安心した。
彼女のそばに寄って同じようにブルに背中を預ける。顔にかかった髪を指で退けると身動いでゆっくりと目を開けた。

「カカシさん…」
「ごめん、起こしちゃった?」
「いえ大丈夫です。うとうとしてただけなので」
「こいつらに構って疲れたでしょ」
「みんなお利口さんで可愛いです」
「9匹目も構ってくれると嬉しいかな」

ひよりは一瞬まだいるのか、と驚いた顔をしたがすぐにその言葉の意味を悟って笑顔になった。 

「もちろんです」

ひよりの手が伸びてきて、オレの頭を撫でる。
くしゃくしゃと犬に触れるように無造作に、でも優しく。撫でられながらコツンと額を合わせて彼女の唇の一回、二回と奪う。
ひよりは恥ずかしそうに「困ったわんちゃんですね」と微笑んだ。

彼女を守る犬が何匹いようとも、この唇に触れていいのはオレだけなんだ。


守り人



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