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「ブレンドコーヒーとモンブランでございます」

イタチの前にコーヒーの入ったカップを、わたしの前にカップとモンブランの乗ったお皿を置いた店員さんは最後に「ごゆっくりどうぞ」とにこやかな笑みを浮かべて去っていった。

「ふふ、ケーキ頼んだの私じゃないのにね」
「男女が二人で店に入り一つだけケーキを頼めば誰だって女性が頼んだと思うさ」
「そう拗ねないの」

目の前に置かれたケーキの乗ったお皿をイタチの前へと移動させた。

イタチと二人で買い物に出かけてちょっと疲れたので休憩がてら近くの喫茶店に入った。店内はモダンな感じで、クラシック音楽が流れているゆったりとした雰囲気だ。わたしもイタチも賑やかなのはあまり得意ではないので、こういった静かな空間はとても落ち着く。

あまり甘い物が得意ではないわたしと、甘い物が好きなイタチ。二人でカフェに入った時には、今日みたいにイタチの頼んだケーキがわたしの方へ置かれるというのはよくあることだった。イタチは仕方がないと納得しているようだけど、男なのに甘い物が好きなのはおかしいなのかと気にしているようだった。それを言うなら女なのに甘い物が苦手なわたしもおかしいことになる。人の趣味嗜好なんて様々だ。気にする必要なんてない。

サイフォンで淹れた苦味のないすっきりとしたブラックコーヒーを飲みながら、目の前のイタチを見つめた。
イタチはかっこいいよりも美しいと形容したくなる綺麗な顔立ちをしている。そんな彼が、ケーキを一心不乱に頬張っている。なんて可愛いんだろう。

「どう?美味しい?」
「……ああ。なかなかだ」

多く語ることはないけどかなりご満悦の様子に、見ているこっちまで嬉しくなる。
甘い物を食している時のイタチの幸せそうな顔が好きだ。普段表情を大きく変えないイタチでも、甘い物を食している時はわかりやすいくらい顔を綻ばせる。……可愛すぎる。
きっと世の彼氏は彼女をこんな風に見ているんだろう。
好きな人の幸せそうな顔が見られるなら、自分が甘い物好きでなくても連れて来たくなる。

「そういえばさ、三丁目に新しいカフェできたんだって。今度行こうよ」
「そうだな」

イタチが穏やかな笑みを浮かべる。口元にクリーム付けてるんじゃ締まらないよばか。
指で口元を指して教えると、クリームに気付いたイタチはハッとして口元を拭った。

あなたとコーヒーがあれば、わたしは何時間でも付き合うよ。



ブラックコーヒーモンブラン



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甘い物頬張るイタチがみたい

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