拍手LOG | ナノ
「明日デートしようか」

読んでいた雑誌から顔を上げると言い出しっぺのカカシが目を細めて微笑んでいた。
私は目を丸くしてカカシを見つめた。

「え、今デートって言った?」
「うん」
「行きたい!」

だってデートなんて久しくしていないんだもん。このチャンス逃したくない!

「ただ昼間で任務だからその後になっちゃうけどいい?」
「全然いいよ!」
「よかった。長引くかもしれないから昼過ぎにいつもの喫茶店で待ってて」
「うん!待ってる!」

やった!カカシと久しぶりのデートだ!カカシが忙しい身なのはわかってて付き合ってるけ
ど、やっぱり会えないのは寂しいし、会える時といえば僅かに時間が被ったおうちデートくらい。最近は任務以外で外で会うこともめっきりなくなってしまったから久しぶりの外デートにテンションが上がってしまう!明日楽しみだなあ。





昼過ぎにいつもカカシとお茶する喫茶店に入り、窓側の席へ通されて珈琲を一杯頼んだ。

久しぶりのデートと相当浮かれているせいか、いつもよりメイクもしっかりしたし、髪も巻いてきた。オフショルダーの服なんか着てきちゃったけど、ちょっと気合い入れすぎたかなあ。むこうは任務帰りだからいつもの標準装備だろうけど。でもカカシならきっと「今日の服、可愛いね」って微笑んでくれるはず。見てないようで、あの人は細いところまでちゃんも見ていてくれるから。

まだかまだかと待ちわびながら珈琲を飲む。ふと窓の外に目をやると空が暗くなっていて一雨来そうな雰囲気だった。カカシはまだ任務だろうか。雨が降る前に帰って来れるといいけど。
カカシを待っている間に一杯目を飲みきってしまった。カカシはまだ来ていないが、任務が予定より長引くなんてことは少なくない。のんびり待とうと思い二杯目の珈琲を注文した。






「……遅いなあ」

五杯目のコーヒーはすっかり冷めてしまった。お腹もガバガバになって正直苦しい。
窓の外は雨が降り出しており、行き交う通行人はみんな傘をさしている。一つの傘に一緒に入っているカップがくっつき合って幸せいっぱいな表情で笑いながら通り過ぎていく。

「いいなあ……」

私も早くカカシに会いたいな。「ごめん遅くなっちゃった」って息を切らして申し訳なさそうにやって来るカカシに「どこで何してたの遅いよ!」って怒って、「ごめんごめん」って頭を撫でられて、私は「しょうがないな」って許してあげる。それから二人で相合傘をしながら雨の街に出て行くのだ。

望むのはたったそれだけのことなのに……。

いくらなんでも遅すぎるような。もしかしてカカシの身に何かあったのかな。最悪の事態を想像してゾッとした。アカデミーへ行ってカカシが戻って来ているか確認しよう、と丁度席を立った時だった。ドアが開いて来客を知らせる鐘が鳴ったかと思うと、ずぶ濡れのカカシが入ってきて、私を見るなり困った顔で笑った。

「遅れてごめんね」
「カカシ……!」

人の目とか濡れることとか気にせずにカカシに抱きついた。雨で体は冷えきっているけど、ちゃんとカカシの鼓動を感じる。よかった……生きてた。

「……心配かけてごめんね」
「いいよ。ちゃんと帰って来てくれたから」
「もう帰っちゃったかと思った」
「カカシなら来てくれると思ったから。コーヒー飲みすぎてお腹ガバガバだよ」
「ハハ、そりゃあ5杯も飲めばね」
「え、なんで5杯飲んだこと知ってるの?」
「あ……」

カカシがしまった!というような顔をしている。

「……カカシ、もしかしてずっと見てたの?」
「いやー、任務は予定通りに終わったんだけどね、オレのことをまだかまだかと待ちわびるお前の姿見たら可愛くなっちゃって、しばらく見てようかなーって」
「はあ!?」

それだけの理由で?この雨の中ずぶ濡れになってまで?バカなの?

「待ってる間オレのことで頭いっぱいだったでしょ?」
「そうだけど……私は心配して……!」
「うん。そわそわしたりニヤニヤしたり不安な顔してたり、百面相みたいで可愛かったよ」
「信じられない!……私が一体どんな気持ちで待ってたと思ってるのよ!」
「ごめんね、もうしないよ」
「バカカシ……」
「この後なんでも付き合うから許して?」

カカシが優しく頭を撫でてくれる。そんな可愛く言われたら許さないなんて言えないよ。

「……しょうがないなあ」

私が許すとカカシはにっこりと笑って手をとった。


「まずはどこへ行きましょうか?お嬢さん」

悪戯っぽく言うカカシと真っ赤な傘で身を寄せ合って雨の街へと繰り出した。デートはまだ始まったばかりだ。



待ち惚け

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意地悪なカカシが書きたかった。
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