「――で、元に戻らなくなった、と」
「ハイ…」
いまだに子犬の姿のあたしはゲンマの肩を借りて綱手様に事情を説明した。
だが綱手様はわけのわからないという顔をしている。術が解けないなんて前例がないのだ。綱手様もお手上げなのだろう。
「変化してから3日経ってます。あたしのチャクラ量ならとっくに術は解けてるはずなんです」
「ゲンマ、ここに来るまで誰かに会ったか?」
「いえ、朔がこの状態なので見られないよう細心の注意を払って来ました」
「そうか」
「綱手様、あたしどうしたらいいんでしょうか?」
「一応検査してみよう。原因がわかるかもしれない。シズネ」
「ハイ!」
綱手様の横でずっと話を聞いていたシズネさんは綱手様に呼ばれると部屋を出て行った。多分検査の手配をしに行ってくれたんだと思う。
「ゲンマ、この事は誰にも言うな。極秘として扱う」
「はっ」
「朔、お前はこれから私と一緒に病院に行くぞ」
「はい…――」
木ノ葉病院で綱手様に診て貰ったが、術が解けない原因はわからなかった。
あたしの力量でこんな長時間術を使っていたらチャクラはとっくに尽きているはずなのに、正常時と変わらないチャクラ量が体内には残っている。術を発動し続けてるのにどういうこと?
「この姿だ。お前には休暇をやる。家で大人しくしてろ」
「あの、この姿じゃ食事の用意もろもろできないんでゲンマの家行っていいですか?」
「そうだな。極力外出は控えろ。ゲンマの任務も考慮しておく」
「ありがとうございます」
では、と綱手様に肉球を見せて病院を後にした。
なるべく人に見られぬよう、屋根の上を飛び越えてゲンマの家を目指す。が、この選択が仇となる。
「うおッ!」
忍ともあろう者が足を滑らせてしまった。普段とは視界も歩幅も跳躍力も全て違う。慣れない子犬の姿での移動は結構難しかった。
(痛たたたたた…)
お尻打った!あの高さから落ちたのに生きてるあたしすごい!犬ってすごい!
どうでもいいことに感動していたあたしは気付かなかったんだ。あたしの落ちた所が
「だいじょーぶ?」
カカシの目の前だったなんて。
◆空からワンコが降ってきました