「ちょっとおおおおお!!あたしの大福食べたの誰!?」
綱手様に呼ばれ待機所をちょっと離れている間に楽しみにとっておいた大福がなくなっていた。この場に残っていた上忍達に訊いてみれば、互いに顔を見合わせ顔を横に振るだけ。誰だ!あたしの楽しみをとった奴は!
「ずっといたカカシなら知ってるんじゃねぇか?」
アスマが読書中のカカシに問い掛けると、カカシが本から顔をあげた。
「オレも知ーらない」
「あんたどんだけ18禁に夢中になってたの」
「だいたいね、そんな大事なものを置いていく方が悪いでしょーよ」
「なっ…!あたしはすぐ戻って来るつもりだったんだもん!」
「目を離した方が悪い」
「何ですってー!!」
ムキー!カカシに掴み掛かりそうになったが、後ろから引かれた力によって手が届かなくなった。
「朔!いい加減にしろ」
「ちょっとゲンマ離してよ!」
「大門で待ってたのに来やしねぇ。任務を忘れた訳じゃねーだろうな?」
「だってカカシが、」
「いやー、助かったよゲンマ。早くそいつ連れてっちゃって」
「カカシ!まだ話は終わってないわよ!ゲンマ離せ!コラァァ!」
あたしの訴えも虚しく、ゲンマにより強制的に外に連れ出されてしまった。くそう!カカシめ、帰ったら覚えとけよ!
「カカシも素直じゃないわね」
「ん?何が?」
「大福食べたのカカシでしょ?朔が怒るってわかってるくせに」
「アイツからかうと面白いじゃない?だからついね、つい」
ニッコリ笑うと紅は呆れたように深い溜め息を吐いたが知らないフリをした。
この時のオレは気楽なもので、数日経てばまた朔に会えると思ってた。だから人の姿をした朔を当分見れなくなるとは考えもしなかったんだ。
◇任務自体は簡単なものだったが移動距離が長い。忍の足で片道4日間かかるってどうなの?
途中、賊の敵襲に遭ったがこれが意外にもしつこかった。忍じゃないから手荒な真似はできない為あたしは変化の術で子犬に化けると、相手は気付かなかったらしく通り過ぎていった(普通に考えてこんな所に犬がいるのおかしいと思う)。
さて、変化解いてゲンマと合流するかな。
…………あれ?あれれれ?おかしいよ?どうなってんの?
変化が解けないんだけど!!
「おい朔、いつまで遊んでんだ。早く術を解け」
「…………ゲンマ、」
「あ?」
「術が解けない…」
「お前何言って…」
「ホントに!何度やっても解けないの!」
「…………マジでか?」
「マジです」
木のてっぺんを見上げるかのようにしてゲンマを見上げる子犬のあたしと、これでもかってくらい子犬のあたしを見下ろしてくるゲンマ。
「そ、そのうちチャクラ切れで勝手に解けんだろ」
「そ、そうだよね!」
アハハハハハ。
この時は信じてた。時間が経てば元に戻るって。
それから3日後。里の大門を目の前にしたあたしは
「……………」
「……………」
いまだに子犬のままだった。
◆変化が解けなくなりました