ワンだふるでいず | ナノ



あれから綱手様の元を後にして、カカシと家路につく。カカシはあたしに気を遣っているのかさっきからちらちら見て様子をうかがってくる。

もしかしたら二度と元に戻れないかもしれないというリスクを背負って巻物に記された術に賭けてみるか。巻物には賭けず、このまま何もせずじっとワンコに成り果てるのを待つ、或いは他の方法を探すか。

どちらにしろ、ワンコ化は日々進行している。迷ってる時間はない。




「……カカシはさ、どうしたらいいと思う?」


カカシは少し考えるような素振りをした後、ゆっくりと口を開いた。


「オレは、あの巻物に賭けてみてもいいと思う。奴らを拷問したのはイビキだっていうし、あのサディストの拷問で本当のことを喋らない奴はいないだろうし。ま、どうするかはお前が決めることだけどね」
「うん」




家に着いても答えは決まらなくて、時間がないという焦りが頭を冷静に回らなくしていた。

カカシが夕食の準備を始める中、あたしはその背中を見つめながらどうするべきなのか必死に頭をフル回転させる。
元の姿に戻ればカカシとの関係もただの気の合う同僚、友人に戻る。24時間ほぼ一緒なんてことはなくなる。ずっと一緒にいたからそれもちょっと淋しい。万が一元に戻れなくても此処にいていいって言ってくれたけど、あたしはやっぱり…――


「カカシ朔、いるかー」


カカシよりずっと低い声が部屋に響く。何事かと思えば、そこにはアスマに紅、ゲンマがいた。


「ちょっと、人の家に勝手に入って来ないでよ。鍵はちゃんと閉めてたはず」
「開いてたぜ」
「……」
「どうせ朔のこと考えてて気が回らなかったんだろ」
「みんないきなりどうしたの?」
「火影様に全部聞いたぜ阿呆朔」
「綱手様に頼まれたのよ。様子を見て来いって」


重苦しかった部屋の雰囲気が、3人が来てから一気に明るくなった。カカシもそれを感じとったらしく、二人で仕方ないねとでも言うかのように顔を見合わせた。

5人で飲むことになって(あたしは飲めないけど)、昔話を掘り返してどんちゃん騒ぎ。あたしのアカデミーの頃の話だとか、初めてマンセル組んだ時はああだったこうだったとか、今だから言える話みたいな暴露トークにまで発展。
巻物に関することを一切忘れて笑いまくった。厳しい修業も辛い任務もあった。でもみんなと過ごしてきた毎日は、こんなにもきらきらしてたんだ。





「いきなり押しかけて悪かったな」
「ほんとにね」
「じゃあな朔」
「次飲む時は外でパーとね」
「うん」


嵐のように現れた3人は騒ぐだけ騒いで帰って行った。


「嵐のようだったね」
「そうだね」
「ねぇ、カカシ」
「ん?」
「あたし決めたよ」


――あの巻物に賭けてみる。


元の日常を取り戻す為に。




◆最後の大勝負に挑みます!
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