ワンだふるでいず | ナノ



「万が一……もしもの時は、このまま此処にいればいい。オレが一生面倒みてやるからさ」


あの時自然と出てきたのは、一歩間違えれば告白ともとれるような言葉だった。無意識故、本心であるのだが、よくもあんな台詞が出てきたものだ。朔にオレの気持ちがバレてしまったんじゃないかと思ったが、所詮相手は朔なわけで…


「え、何?じゃあ綱手様に聞いたのはいずれ犬に成り果てるってことだけ?」
「うん。だってそれ聞いてショックで飛び出してきちゃったんだもん」


アハハハハハ。ごめんね。


いつもみたく笑う朔。ついさっきまで張り詰めていた空気はどこへやら。朔はこっちまで気が抜けてしまうくらい大きな欠伸をした。


「なんか眠くなってきた。あたし寝るね」
「いろいろあって疲れたでしょ。ゆっくり休みな」
「うん。おやすみ」
「おやすみ」


朔の瞼が落ちて規則正しい寝息が聞こえてくる。
ワンコ化が進んでる。あまり時間はないのかもしれない。窓の向こうに目をやる。ここ数日感じてた気配が消えた。暗部も動き出したらしい。明日綱手様の所へ行けば何かわかるかもしれない。これから忙しくなるだろう。そんなこと考えながら朔の隣りで眠りについた。











翌日、カカシに「昨日の続きを綱手様に聞きに行こう」と言われ、再び綱手様の元を訪れた。正直言うとこれ以上何かを聞くのは怖かった。悪い知らせしか浮かんでこない。でもカカシがいてくれるなら、今度は逃げ出さずに聞ける気がする。


「昨日は人の話を最後まで聞かず出ていきやがって」
「す、すみません」
「まぁいい。いくつか話すこともある」


綱手様は背もたれから体を離し、前で手を組んだ。


「昨日の晩、里の立ち入り禁止区域とカカシの家の近くで天の国の忍を捕らえた」
「……」
「あまのくに?」


聞き慣れない国の名前にカカシが訊き返す。


「天の国――数年前、火の国の北部にできた新しい国。国そのものが隠れ里と同じようなもので、その国に住んでるのはみんな忍。しかもそいつら、いろんな里の抜け忍だった」


隣りで淡々と話し始めたあたしにカカシは驚いていた。何故あたしが天の国のことを知ってるのか。


「2年前、任務で天の国に行ったのはあたしだから」


綱手様がその時の任務報告書をカカシに見せた。

当時の火影であった三代目に言われ、最近できた不審な国・天の国の情報を得る為半年間内部に潜り込み諜報活動をすることになった。一見平和そうな国だが、一歩闇の中へ踏み込んでしまえば、薬や禁術の開発、人体実験、まさに違法だらけの危なすぎる国だったのだ。


「あれ?でもどうして天の国の忍が?」
「捕らえてすぐ尋問にかけたところ、お前の変化が解けなくなったのは天の国の仕業だとわかった」
「なんで、いつの間に」
「任務で天の国に行った時お前は術をかけられていたんだ。奴らが研究していた、変化したものになってしまう術をな」
「待って下さい。あたしが天の国に行ったのは1年以上も前のことです。何で今になって」
「時限式だったか、お前が変化の術を使っていなかったからだろう」
「……」


特別上忍の時は諜報活動が主だったから姿を変えられる変化の術は多用してたけど、上忍になってからはあの日――変化が解けなくなった日に久しぶりに使った気がする。


「今回のあいつらの目的は実験体となったお前とその術を解くことができる術の記された巻物の回収だそうだ」
「あたし戻れるんですか!?」
「……わからん」
「え…」
「巻物は既に暗部が回収したが、」
「だったら……!」


喜ぶあたしとは違い、綱手様の表情は厳しい。何で?この術が解ける術が巻物に記されているんじゃないの?


「……罠かもしれない、ということですね」


隣りのカカシが静かに言った。それに綱手様も同意する。


「奴らが解ける術と言ってるだけであって、本当にそうかはわからない」
「そんな……」
「だからと言って戻れないと決まった訳じゃない」
「……」
「どうするかはお前が決めろ。あまり時間はないがな」




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