ワンだふるでいず | ナノ



「朔さんに逃げられたって本当ですか?」


この前の任務でサクラに言われた言葉が頭の中を駆け巡る。まさかあんな噂が出回ってるだなんて。あの時は咄嗟に朔は長期任務に出ていると答えてしまったが、実際のところどうなのだろう。


……オレ本当に捨てられた?


いやいやいやいや、第一オレと朔はそんな関係じゃないし。ただの気の合う同僚。ってのが朔からしたら妥当なのかな。オレは朔のことただの同僚だなんて思ってないけどね。だから、こんなに長く姿を見ないと心配になるじゃない。





「朔なら任務に出てる」


綱手様に尋ねたところそう返ってきた。


「ゲンマとの任務から帰ってすぐ次の任務を言い渡してな」
「どれくらいで帰って来るんですか?」
「……わからん」
「え」
「明日かもしれないし、一月後かもしれない。長びけば何年も先になる。あの子次第だよ」
「そうですか」


任務内容は当然のことながら教えて貰えなかった。ただ、今回の任務は朔の得意とするスパイ・諜報活動らしい。どれくらいで必要な情報が集まるかもわからない。諜報活動となればそれなりに時間を要するから帰ってくるのは先のことだろう。




用も済んだし家に帰ろうと木ノ葉通りを歩いていると見知った二人に出くわした。


「お二人さん、仲のよろしいことで」


紅は恥ずかしそうに顔を背けたが、アスマは満更でもないらしく淡々としていた。


「何だカカシ一人か?」
「家に帰ろうとしてたから」
「そうだカカシ、犬飼い始めたんだって?」
「アスマから聞いたの?」
「まぁね。どうせ暇でしょ?その犬見に行くついでにカカシんちで飲みましょうよ」


紅からの提案にアスマもノリ気らしい。別にこの後の予定は何もないから二つ返事で了承した。










家でカカシの帰りを待っている間、暇で暇で仕方ない。でももうすぐカカシが帰ってくる。相変わらずカカシの一動一句にドギマギしてしまうけど、避けるのはかえって不自然だということを学んだ。平常心。平常心――


「ただいま」


カカシが帰ってきた!玄関まで迎えに行って目ん玉が飛び出るんじゃないかってくらいびっくりした。ななななななんで紅とアスマがいるの!?玄関の一歩手前で踏み止まるあたしをカカシが持ち上げた。


「この子がこの前話したサク。なんか朔に似てない?」


視界いっぱいにアスマの顔が広がる。こんなに見つめられたら正体がバレるんじゃない!?汗の分泌量すごいんだけど!てかアスマ煙草くさっ!!


「似てねぇだろ」


漸く顔を遠ざけたアスマは部屋の奥へと入ってしまった。


「私は似てると思うけど」


ちょっと紅いいいいい!!余計なこと言うのやめて!ばれたらどう責任とってくれるんだよおおお!


「おいカカシー」
「今行く。紅、サクお願い」


と、あたしを紅に預けたカカシはアスマの方へ行ってしまった。


「……………」
「……………」


気・ま・ず・い!


紅はあたしの正体知ってるだけに何かとやりにくい。


「悪いわね。二人っきりのところ邪魔しちゃって」
「……紅、何しに来たの?」
「決まってるでしょ。あんた達の同棲生活を見に来たのよ」
「同棲って言うなっ!!」
「事実そうでしょ。一つ屋根の下で一緒に暮らしてるんだから」
「うっ、それは否定しないけど……これは同居でしょ。てかあたしペットだし」
「カカシも案外鈍いわよね。朔だと見破れないなんて」
「とにかく、カカシに余計な事は言わないでよね。あたしが『朔』だとわかったらここに置いて貰えるかわからないんだから」


それだけ言うと、紅の腕から抜け出してカカシ達のいる奥の部屋に向かった。


「……馬鹿ね。置いてもらえるに決まってるじゃない」


カカシはあんたのこと――





あたしの目の前で飲み始めた3人。いいなぁ。いつもはこの中にあたしも混ざってたのに。カカシに縋り付いておねだりしてみた。しかしカカシがくれたのはスルメイカ。そうそうこれこれ!……って、ちっがぁぁぁぁう!!あたしはお酒が飲みたいの!そこの髭野郎みたいにぐびっといきたいんだよ!


「サク、おいで」


え、何急に。やなんだけど。カカシの奥にいる紅がにやにやしてる気がするんだけど!やめてその顔。


「どーしたのサク?いつもなら飛びついてくるじゃない」


ぬああああああ!!!!誰かこの男の口を塞いでくれ!紅なんて口元を押さえてる。その下で笑ってるのはわかってるぞ!


「懐かれてねぇのか?」
「そんなことないよ。お風呂だって一緒に入ってる仲だし」


ふぎゃあああああ!!!!!誰かこの男の息の根を止めてくれぇぇええ!!ちょっ…紅!そんな目であたしを見るな!そのニヤついた顔をどうにかしろぉぉぉお!!

カカシは酔ってるのか一段とスキンシップが激しい。そういえば今日ペース早い気がする。突然カカシは無理やりあたしをひざの上に乗せた。そして前足を引っ張られ2本足で立たされた。何この羞恥!?いじめ!?いじめなの!?
するとカカシはなんとあたしの掌をふにふにと押しはじめたのだ。


「サクの肉球って触り心地いいんだよね」


や、やややややめろぉお!!くくくくすぐったいっ!!


「カカシ、サクのやつ嫌がってねぇか?」


ナイスアスマ!あんたあたしと疎通できたんだね!


「違うわよ。犬はああやると喜ぶのよ」
「そうなのか」


納得するなぁあ!!紅も余計なこと言ってくれちゃってさぁ!!あたしが本当はワンコじゃないの知ってるくせに!!


「サクを抱いて寝るとよく眠れるんだよね」


あんたもう黙ってぇえええ!!!





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