ワンだふるでいず | ナノ



「……本当に?」
「間違いない」


パックンに朔の匂いを追わせて辿り着いた先はなんとオレんちだった。パックンはオレの優秀な忍犬だ。疑うわけじゃない。けど、なんで朔がオレんちに?


「どうしたカカシ?」
「なんでもなーいよ」


パックンに笑いかけながら鍵を開けドアのぶに手を掛けた。


「朔ー、帰ってるなら一言くらい……うおっ!」


ドアを開けると共に飛び込んで来たサクを受け止める。上忍のオレが後ろに倒れそうになるくらい力強いタックルだった。今もすごい睨んでるし、もしかしてサク……ご機嫌ななめ?











外で人の気配を感じた。どうやらカカシが帰って来たらしい。しかもパックンと一緒に!


……なんでパックンと?


それは置いといて。あたしは今猛烈にお腹空いてる。餌置いて出掛けないってどうなの?あたしを餓死させる気?動物愛護法で訴えたい程だ。
ドアのぶが回り、ドアが開くと同時に奴に飛び込んだ。


(餌くれやぁぁぁぁ!!)
「朔ー、帰ってるなら一言くらい……うおっ!」


………は!?


今カカシ、朔って……。あたしと被ってよく聞き取れなかったけどサクじゃなくて朔って呼んだよね?あたしの正体バレ、た?
受け止めてくれたカカシをじっと見つめ返す。カカシはへらりと笑ってからパックンに呼び掛ける。


「朔どこにもいないんだけど」


その言葉に困ったようにあたしを見るパックン。そうか。わかったぞ。カカシは(人間の)あたしを探そうとパックンを口寄せしたんだ。そしてパックンは気付いてる。あたしが朔だってこと(だってパックンガン見だもん)。匂いでバレちゃうよね。でもカカシにバレるわけにはいかなくてパックンに視線を送る。


ーー絶対に言うな。


草食動物を目の前にした肉食動物のような眼力でパックンにアイコンタクトを送る。優秀なパックンはそれを理解したらしく、あたしに「わかった」と視線を送ってきた。


「お前が留守だったから朔は帰ったようだな」
「アイツなら鍵こじ開けてフツーに入ってきそうなもんだけどねー」
(失礼な!!)


ま、明日でいいか。と笑みを作ったカカシの表情は寂しそうだった。


「それよりカカシ、この犬はどうした?」
「ん?サクのこと?」
「サク?」
「いやー、空から急に降ってきてね、朔に似てたから拾っちゃったのよ」


カカシの話を聞いたパックンはそういうことか、とぽつりと漏らしたがカカシの耳には届いていなかったらしい。


「拙者はこれで」
「パックン、ご苦労ね」


ボワン、と音を立ててパックンは消えた。




部屋には一人と一匹。カカシと二人になった訳だが、カカシの様子がおかしい。椅子に腰掛けてボケーと、自分の世界に入ってるっていうか、元気がないっていうか、話し掛けにくい雰囲気(いや、あたし話せないんだけどさ)。

いつもと違うカカシが気になり寄り添うように足元で丸くなってみた。
どうしたのカカシ、らしくないじゃんか。いつもの余裕なあんたはどこにいっちゃったのよ。


「……今はサクがいるしね」
(なんのこと?)
「朔に大福買ったんだけどアイツいないみたいだから、食べる?」


目の前に大福を置かれた。
あたしの為に買ってきてくれたんだ。でもさでもさ、犬に大福ってどうなの?確かにお腹空いてるけどさ、犬に大福は間違ってるよね?パックン達ってどう世話されてきたんだろう。

そんなこと考えるだけ無駄なんだろうな。カカシの頭の中は近くにいたってわからないんだもん。考えたら更にお腹空いちゃったよ。カカシ、いい加減まともなご飯ちょーだい!




◆お腹が空きました
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