里に帰って来た翌日。
朔のことが気になったオレは火影様の元を訪れた。
「ゲンマか。どうしたこんな朝っぱらから」
「朔、どうしてますか?」
「朔なら検査の後お前の元へ向かったはずだが?」
「え……」
「会ってないのか?」
「はい」
火影様の表情がみるみる焦りを含んだものに変わっていく。
「朔を探せ!なんとしてでも見つけ出すんだ!」
「ハッ!」
あの馬鹿!あんな格好のままどこ行きやがったんだよ。
◇「ハイ、朝食」
目の前に出されたのはドッグフード。あの、あたし変化してるだけで一応人間だから!犬用の食べ物とか無理だから!精一杯首を振って拒否をアピールすると、カカシは皿を下げた。助かった。
「お前ワガママだねー。ミルクなら良いでしょ」
ワガママとかいう問題じゃないから!人体に悪影響だから!あたしをどうしたいの!?と、言ってやりたいは山ほどあるがそんなこと口に出せないので、出されたミルクと共に飲み込んだ。
「オレ今日は部下達と任務だから大人しく待ってるんだーよ?」
カカシは上忍師だから忙しいんだよね。ナルトくんが言ってたけど任務中もイチャパラ読んでるらしいし。子供の前であんなもん読むなんて教育上よろしくない。
それにしても、今日のカカシなんか機嫌良い気がする。
「どーしたのサク、オレのことそんなに見つめて。もしかして淋しいの?」
いや、違うから!
何だこのポジティブ野郎!
「アイツ……朔もね、オレが任務に行く前そうやって淋しそうに見てくるんだよ」
(え……?)
「子犬みたいな目でね」
カカシの手が頭に触れる。
「たぶん今日アイツが帰って来ると思うから会わせてあげるよ」
ポンポン。と軽く叩いてカカシの手が離れる。大人しくしてるんだよ、と言い残して出て行った。
「はぁ……」
カカシの気配がなくなったのを確認してどっと出る溜め息。溜まっていたものが一気に吐き出される。黙ってるのって結構辛い。
(カカシはあたしが今日戻って来ると思ってるんだ…)
カカシの求めてる“朔”は戻ってこない。あたしはいつになったら戻れるんだろう。まさか一生このまま!?いやいやいやいや。……まさか、ね。
「……あ!元の自分の姿に変化したら戻れるんじゃないの!?」
我ながら良い考え。早速実行しようと印を組もうとしたのだが……
……組めない。
指短いくて肉球あって印が組めない。イコール、忍術が使えない。
NO―――――ッ!!!
◆肉球を呪いたくなりました