携帯を耳に当てて聞こえてきたのはあーしんどいや、しにそうという二言で声音こそいつもの彼と変わらない感情の読めないものだったがしかし問題は内容。何事かと聞き返す前に電話は切られてしまいわけがわからなかったのでとりあえずもう一度コールをしてやれば、出ない。意味がわからない。


「遅いよナマエ」
「ちょっ…と、なんなの、よ…。全然ぴんぴんしてるじゃない」


ぜえはあと息を荒らげながらも標高3722メートルの彼のもとへ到着した。が、奴は優雅にソファーで足を組んで私を出迎えた。いや、うん、やっぱりこの男が死にそうになるわけがないよな。30パーセントぐらいはこの展開を予想してたよ。第一死にそうになって私を呼びつける理由もわからないし。別に私が治療系の念を使えるわけでもないのだから。


「で、用件は?なんであんな電話したの?」
「珈琲豆買ってきて」
「…は?」
「俺今すごくコーヒー飲みたいんだよね、でも家にある珈琲豆が好みじゃなくてさ。だからナマエ新しいの買ってきて。ああそうだ、俺喉渇いてしにそうなんだよ」
「………」


来るまでに本気で心配していた70パーセントを返せ。もうこの男には付き合ってられん、そう思いドアノブに手を掛けひね…られない。いつの間に鍵を掛けられたのか、しかしこの男の行動にいちいち疑問を持っていたらキリがないので後ろへ向き直す。


「出して」
「ちゃんと買いに行くなら出してあげてもいいよ」
「嫌」
「そう。まあ行かないならナマエが此処でずっと監禁されるだけだから俺はどっちでもいいんだけど」
「!?」


いやいや待て待て冗談だろう。なんだ珈琲豆か監禁かって。なんで同じ天秤に乗ってるんだおかしいだろ。という目を向けてなにも言えずにいたところ逆にイルミの大きな黒目に見つめ返されてまあ勝てるはずもなく。この男、マジだ。


「じゃあ……珈琲豆」
「うん、5分ね」
「えええ!?」
「5分以内に帰ってこなかったら、まあ何か適当におしおき考えとくよ」
「(これはもうばっくれるしか…)」
「ちなみに見張りつけといたから逃げるとか考えないでね」
「え…」


イルミが頼み事をする相手といったらアイツしか思い当たらない、ヒソカだ。最悪だ。こんなくだらないことに協力するなんて暇すぎるんじゃないかあの奇術師。けれどもうこれで絶対逃げられない。


「はいよーいドン」
「ちょっ、ちょちょちょっと待って…!」
「ほらいいの?グダグダしてるともう貴重な10秒が経っちゃうけど」
「うっ…」



選んでしまう不適切



自分で買いに行けえええええと捨て台詞を吐きながら標高3722メートルを駆け下りるのはこれで最後にしたいものだ。



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H×H/イルミ・ゾルディック

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