だって正義は勝つんだからA
『うるせぇんだよ馬鹿が』
「すんませんでした」
思えばこれが苗字との初会話だったように思う。
初めて苗字と席が隣通しになったのは夏休み前だった。大抵の授業はサボるか寝るかのいずれかで、全く勉学に関して駄目駄目かと思いきや、跡部に次ぐ成績をとってしまったこのクラスメートに俺は喧嘩を売ってしまった。
居眠りして授業が始まってもなお起きない苗字を俺は好意で起こしてやった。
そして冒頭に至るわけだが…。
『つかお前誰だよ。何勝手に起こしてんだよ。ほっとけよ、てか触んな』
「すんません」
『謝る時は申し訳ございませんでしただろうが』
「申し訳ございませんでした!!」
『土下座しろや』
「はい!!!」
部活でもこんなにキレのある返事をした事があっただろうか。
もう俺は土下座の世界選手権に出れる(まぁ、そんな選手権があればだけど)位の勢いで苗字に向かって土下座をした。
ざわついていた教室は一瞬にして静まり返ったが、しばらくして女子が苗字に抗議の声を上げた。
「ちょっと苗字さん!!宍戸君かわいそうジャン。」
「マジ意味わかんないから。好意で起こしてくれたのに逆ギレとか」
「謝んのは苗字さんの方でしょ」
段々とヒートアップしていく女子。
俺は頭を少し上げて苗字を見た。うつむいている苗字を下からのアングルで見ていたのはもちろん俺だけだったから、あの恐ろしい顔を見たのも俺だけ。
苗字は般若すらも恐れる顔で笑っていた。「何とか言いなさいよ」
『うっせーんだよハゲ。それから誰がいつ頭あげていいっつったよカス』ここからが苗字の最強説につながる。
俺は目にも留まらぬ速さで床に再度頭をつけ、目の前の女子は怯んで全く動けなくなり、クラス中かまた静まり返った。
つーか、あれらの女子はハゲで俺はカスなんだな。
『人が折角の昼寝タイムを満喫してたってのに安眠妨害で訴えるぞてめぇ。てかさっきから私のこと苗字で呼び捨ててくれてるけど、どういうこと?何、喧嘩売ってんの?苗字じゃなくて苗字様だろうが。つかお前誰だって聞いてんだからさっさと答えろや前歯折んぞてめぇ』
ここまで一息で言い放った苗字(様)が大きく息を吸った。第二次マシンガントークがくる。
『つかハゲこの野郎何さっきからこっちジロジロ見てんだよ』
「いや、それ先生…」
『今何の時間だと思ってやがる』
「…授業中な」
『何だよてめぇうるせぇな、狩るぞ』「ひぃ!!!」
どこからか取り出したのは草刈用の鎌。何で教室にそんなものが…。
教卓の前に立つ先生が怯えていつもより小さく見える。授業させてもらえない上に、苗字に目を付けられたらひとたまりもないよな。そうだよな。
俺もそうだもん『何が俺もだよ』
「何でもありませんすいません」
『あー眠い…寝る。』
「どうぞ、お休みなさいませ」
『あ、』
「何…」
次起こしやがったら一瞬で地獄見るからな(あの言葉を囁かれた瞬間もう俺は死にたくなった)
(へぇ、苗字先輩と宍戸さんにそんな過去が…)
(あぁ…今思い出しても恐ろしい…)
(てか、大分今と印象違いますね)
(あいつ眠いと口悪くなるんだ)
(口悪いとか悪くないとかそういう次元の話じゃないですけどね。)
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リクエスト下さった雪奈光様、ありがとうございます!!
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