四天宝寺名物


「名前は俺と食べるんや」

「何言っとるんね白石」



今日も俺の視界の端っこではくだらない争いが巻き起こっていた。
そしてその一番の当事者は飄々と俺の所に来て、弁当を食っている。


「お前は参加せんでええんか?」

『あんなのと一緒に言い合いしてたら弁当食べれん。』

「自分、本当にクールやなぁ」

『謙也がへタレすぎるだけやろ』

「それ関係ないやろ」


もはやこの四天宝寺では名物といえる白石対千歳の名前の取り合い。
当の本人は興味がないらしく、参加していないが。


そもそもこの良い合いが始まったのは、名前のせいでもある。
今までこんなド派手にやってなかった合戦は、最終的に名前がどっちを選ぶかで決めようという事で一度決定された。


白石と千歳が、お前はどっちを選ぶ?と聞いた所、名前は、強い方。と一言かえしたそうな。

それからや。どっちがこの言い合いで諦める(もしくは泣くとか)かを名前の前で見せたるという訳のわからない思考に移った二人はこうして名前の前でごちゃごちゃ言っているというわけだ。

迷惑極まりない。




「お前みたいな絶頂絶頂言っとる変態野郎なんかに名前は渡せんばい」

「お前かて無我の境地やら何やら、中二病なんと違うか?」

「中二病なんて変態より幾分かましたい」

「どこがや。変態で何が悪いねん。男は全員誰しも狼。変態なんはしゃあないやろ」

「その変態共が事件起こしてニュースになるんよ、白石」

「アホちゃうか。俺は名前を大切にする自信あんねん。事件なんか起こすわけないやろ」





遠くから聞こえてくる会話。事件起こすとか、もうすでにこの時点で起きてるっちゅー話しなんやけど。

この合戦がすでにこの四天宝寺では事件なんやけど。


「お前なんとかせぇや」

『無理や。でも優雅な昼休みをあの騒音でつぶされるんは嫌やね』

「せやろ!!?」

『どないしようか…。あ、謙也的に強い人って誰?』

「えー…………千歳やと俺は思うけど?」

『あの二人じゃ意味ないやろ。他の奴や他の奴。自分もあいつらと同じくらいアホやな。』

「あれよりはマシやろ。そうやな…師範とかどうや?」

『師範…?銀か。ええなぁ。ちょっと行こうや』

「え、どこに?」

『師範のところに。』

「何で!!?」

『協力してもらうんや』


「何言って…「何そこイチャイチャしとんねん!!」は…?」




声のした方を見ると、すごい形相で睨む白石と、オーラを纏った千歳。
いや、何で俺睨まれてるん?



「謙也、どういう事や?」

「何がやねん!!」

「何お前名前とイチャコラしとんねん!!」

「してへんわ!!」

「もしかして名前の好きな奴って謙也じゃなかとね…?」

『違うわ、こんなヘタレ。うちのタイプやない。』

「酷いっ!!」

『うちは、師範みたいな人に憧れてんねん』

「師範ーーーーー!!!?」




名前の爆弾発言は、白石と千歳の心に多大なるダメージを与えた。


「し、師範の…どこが…」

『筋肉』


あぁ、確かに師範って筋肉すごいもんな。
白石と千歳もそれなりにあるけど、師範程ではない。
てか、何で俺まで巻き込まれてんねん。
何で俺までメンタル傷つかなアカンねん。



『そういうことだから』


じゃあね、と言ってどこかに消えた名前。


名前の去った教室には、真っ白になった二人の男が隅っこでいじけていた。
そして、その日の部活で、白石と千歳がいつもの倍以上筋トレをしていたのは言うまでもない。




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みかん様リクエストでした!!遅くなってしまい大変申し訳ありません(汗)

では、リクエスト下さったみかん様。ありがとうございました!!

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