「名字治療…頼んでもいいか?」
『治療?怪我したの、源田君』
「擦りむいた」
部室に入ると名字はドリンクを作っていた。
本当なら、ちょっとの怪我なんて放っておくが
俺がここに来たのは怪我の治療なんかじゃなく、ただ名字と話したかったからだ。
授業であの写真を見てから、過去に置いてきた気持ちが今頃になって一気に膨れ上がってきた
佐久間に初恋は名字かと言われた時、咄嗟に否定したが、図星だよ
俺名字の事好きだよ
すげぇ好きだよ
ガキの頃だって名字が格好良いって言った男子ボコボコにしたし、
体育のサッカーでキーパーやってた名字にボール当てた奴に集中攻撃してやった。
マジで好きだったのに何で忘れちまったんだろ
ま、名字も俺の事忘れてたんだけど
気にしたら負けだ。
今だって一生懸命に治療してくれている名字への気持ちは現在進行形で大きくなっている訳で、どうしたら良いのかわからない。
なにがキング・オブ・ゴールキーパーだ
情けない
『よし、終わり…』
「さんきゅ。なぁ名字…」
『ん、何?』
「あのさ…
名前で呼んでもいいか?昔みたいにさ……」
『うん、じゃあ、あたしも……』
「お、おう……じゃ、俺練習戻るから…
じゃあな……名前」
…………………な、何やってんだ俺
あんなの好きだって言ってるようなもんだろ!!
うわぁぁぁあ……!!
ヤバイ…好きだ
めちゃくちゃ好きだ
「……名前」
《名字、源田の様子が変だ》
《そ、そうかな?》
《あれ?名字も変だ》
《えっ、そうかな?》
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