言葉では到底表現できないようないやらしい水音が響く。それはもう耳元に音源があるかのように。ちかちかと視界が白く瞬いたりを繰り返している。あぁ、やばい飛んじゃいそう。息苦しさすらも身を焦がす熱となり、愚かにも生物的欲求に素直なあたしの身体はそれに咽ぶ。嬌声を上げることすら儘ならない限界に視界が一層白く瞬いて、達する寸前で呼び戻された。



「ねぇ、なまえ」

「…なに、」

「女の子ってさ、首を絞めると締まりがヨくなるんだ。知ってたかい?」

「知ってるわけないでしょ、あたし挿れるもの無いし」



壮絶に笑んで碌でもないことを言うこの男のどこにあたしは惹かれたんだろうか。再び白く瞬きを始めた視界にその人物をしっかりと収めて、考えてみるけれど心当たりがありすぎて思考を止めた。くそぅ、あたしのベタ惚れじゃないか。あぁ、悔しい。ぎりぎりと心中で歯軋りをするだけじゃ気が治まらない。せめてもの憂さ晴らしにと、伊作の人でなし、と笑ってやったら一層強く突かれた。本当に人でなしだなこの野郎。



「なまえは、そうやって男を煽るのが得意、だね」

「生物的欲求は楽しく満たしたいから」

「少しは抵抗すればいいのに。ヤり甲斐がないなぁ」

「んふふ、お生憎様。また今度ね」



意地を張って余裕ぶって見せたその瞬間にがくんと力が抜ける。ぶっつりとビデオテープのように記憶が数秒だけ飛んで、身体の感覚がいきなり蘇る。AV女優の皆さんはそれはもう官能的にエロティックにイくんだろうけど、そんなのあたしに出来るわけがない。なんとも情けない声を上げて、びくんびくんと全身の筋肉を硬直させて、はいお終いだ。生殖行為の終点としては些かあっけないと思う。気だるい身体を起こしながらそんな可愛げも色気もないことを思い、息を吐いた。



「伊作って、ホント女泣かせだよね」

「失礼だな、僕は誠実な男だよ」

「よく言うわ、この腹黒が。女々しい顔してる癖に」

「………へぇ?」



最後の一言が気に入らなかったらしい伊作に強く肩を掴まれて、押し倒される。あぁもう、好きにしてくれ。いいよ、あなたとってもお上手だから。みっともなくそんな風に半ば投げやりに身体を投げ出して、ふと思い出す。そう言えば。



「ねぇ、知ってる?」

「…どこかで聞いた切り出しだね」

「男ってさ最中に背中に爪立てたり、腕に縋ると大きくなるの」

「へぇ?」

「まぁ、伊作には挿れる場所無いから分かんないだろうけど」



君も大概人でなしじゃないか、まるで同族のように言われたのが訳も無く尺に触って、思いっきり締め付けてやった。



絶頂のす〆め
(快楽こそ全てなの)





 



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