ところで、と切り出した なまえは妙に生き生きとしていて、何かを期待した目をしていた。中学英語の教科書に出てくる探偵みたいな仕草でなまえは聞いてくる。


「はっちゃんや、今日は何の日か知っているかね」

「風呂の日だろ?」

「え、何それ初めて聞いた」

「俺も昨日初めて知った」


易々と話をすり替えられてることに気付かないで、携帯で調べ始めたなまえに思わず溜め息が溢れた。俺みたいなのにさえ上手く遊ばれるから三郎に馬鹿にされるんだ。確かな情報源を確認したらしいなまえが思い出したように顔を上げる。どうやら上手く躱されたことに気付いたようだ。


「いや、もっとおめでたい方向で考えてよ!」

「じゃあ、東名高速全線開通記念日」

「もっと個人的なやつ!」


だんだんと真剣になってきたなまえをこれ以上焦らすのも悪い気がして、ベッドの方を指差した。瞬間輝きを帯びた表情に苦笑いが溢れそうになるのを抑える。あんまりからかうと後で面倒になるのは充分に分かっているから。


「本当は後にとっておくつもりだったけど、そこにあるから」

「!!やった、開けていい?」

「おー、開けろ開けろ」


嬉々として包装紙を解いていく姿が子供っぽくて、また笑いを誘う。ああうん、可愛い。


「……え、」


出てきた手乗りサイズの人形に明らかに落胆した様子を見てもどかしくなる。ほら、早く気付いてくれ。ちらちらとこちらを見るなまえの視線に気付かない振りして、手元の雑誌をめくる。因みに内容なんてこれぽっちも入ってきてない。


「あ、」


はっちゃん、と震える声が落ちた。人形の左手にはめた指輪を指差してなまえが泣き出しそうな顔をした。


「誕生日プレゼントは俺の苗字とか、いかがですかお嬢さん」





幸せの共通点
(これからも、きっと)





 
もうホント、遅れてごめんね…。一日過ぎてしまったけど、りこたんおめでとう!!というわけでりこたんにささげます。
 



- ナノ -