彼の鼻は人より少しばかり高いかもしれない。それでも彼は努力する人だから、それを人前に晒すわけでもなくただ結果のみで語る人だから。だから私は彼が愛しいと思うのです。


「お前も趣味が悪いな、あの滝夜叉丸に惚れるとは」

「あの、だなんて酷い言い方。平くんは素敵な人よ」


平くんは人より少し自信家なだけだ。けれどそれに見合う努力をしている。才能の上に胡坐をかく人間には嫌悪感を抱くけれど、才能に甘えず努力しているひとをどうして嫌いになれるだろう。真実を見ようとせず表面だけを見て、突き放すことは簡単なことだ。けれど相手の力量を測り、そして自分の意識を高めることは一流の忍を目指すなら必要なことではないのか。田村くんのようにまっすぐ堂々と立ち向かえばいいのに。


「そうできないのが普通なんだよ。お前みたいに考えられる人間はそうそういないさ」

「まるで私が変な子みたい」

「…お前はいまでも充分変な奴だから、安心しろ」


納得いかずに頬を膨らませると田村くんはどうでも良さげに私の頬を突いて笑う。もう、と怒ると田村くんはいたずらっ子みたいに笑いながらカノコちゃんと一緒に逃げていった。カノン砲と一緒に散歩してる田村くんの方がよっぽどだよ、と言っても多分理解してくれないだろうなぁなんて肩を落とす。田村くんは悪い人じゃないけれど平くんと同じ属性の人なのだ。


「むぅ、厄介な人だ」

「三木ヱ門がどうかしたのか?」

「わ、平くん!吃驚した…遅かったね?」

「…あぁ、七松先輩に捕まってな」

「わぁーお疲れさまです」

「いやなに、この成績優秀眉目秀麗の滝夜叉丸にかかればぐだぐだぐだぐだ」


あぁ始まったなぁ。長年の経験から掛かる時間を見積もって、適当な所に座って平くんの話を聞く。これを見た友人は皆、苦痛ではないのかと尋ねるけれど、そんな風に思ったことはない。好きな人が自分を否定する姿は見たくないし、本人であっても貶す言葉は聞きたくない。だから平くんみたいに自分のことを胸を張って好きだと言える人がいいのだ。それに、私達の関係は一方的なものなんかじゃない。


「ぐだぐだぐだ………、あ」

「?」

「すまない、今日はなまえの練習に付き合う約束だったな…」


こうして申し訳なさそうに私を見たりする平くんの目はしまった、という色が浮かんでいて。それは嫌われたくないと訴えるかのようで、なんというかとても可愛い。平くんは平くんなりに人と関わるのが下手なことを気にしていて、一生懸命変わろうとしている。努力する所を人に見せない平くんのこんな所、私だけしか見れやしないのだ。


「ねぇ平くん」

「どうしたなまえ」

「私、平くんのことだぁい好きよ」

「!!」


ああほら、ね。私達はお互いに特別でしょう。





かわいいひと
(思いあえたらハッピーエンドね)





 
あーはいはいご馳走さまですみたいな滝ちゃん夢、のつもり。ミキティ多めに出してみたのでどうぞこれで許してください。タバたんに捧ぐ!
 



- ナノ -