ビターテイスト | ナノ



2/3



「やばいやばいやばい…!」

下ろしたてのルーズソックスを履いて、継実は慌てて駆け出した。
高校が近所だからといっても、あまり余裕のある時間でないことは誰がみても明らかで、いってきますの掛け声とともに玄関を飛び出すと柵の向こうには気だるそうな幼馴染の姿があった。

「ご、ごめん!晋助…」

「別に気にしちゃいねぇ。いつものことだろ…っ」

呑気にあくびを噛み殺しているが、そんなにゆっくりもしていられない。
自転車を引っ張り出し、いくよ!と晋助を荷台に乗せ、ペダルに力を込めて学校へと向かう。

「(...逆じゃね?、、まぁいいか...)」

ふぁ、と高杉は大きくあくびをした。
緩やかな向かい風とともに薄紅の花弁が二人の頬をかすめていった。




*****




「げ、」

「げってなんでィ。この一年間も俺の立派なパシリにしてやらァ…陽、焼きそばパン買ってこい」

「ふざけんな、そこらへんの女子引っかけて買わせてろドS野郎」

クラス表の前でよろしくない表現を含みながら口論をしている男女は、仲が良いとは到底思えない。
方や容姿端麗な男子、方や比較的美人な女子

出身中学が同じだからという理由もあって登下校が全く一緒だというのに、クラスまでこいつと行かなきゃいけないのか…陽は心中で頭を抱えた。
さっさと先輩たちと会って、そこのドS星の王子さま(笑)を引き渡し(押し付け)たいというのに…

「じゃ、俺は行くぜ」

「何しようとしてんだテメェ」

珍しく去っていこうとする沖田をすんでのところで引き止める。何事もなかったように居なくなる時は決まってサボるか逃げる総悟のことだ、怪しい、物凄く怪しい。

「近藤さんのとこに挨拶に行こうとしてんでさァ。離せ」

「だったらさっさと向かってるだろ、私だって会いたいんだけど。連れてけるもんなら連れてけや」

「......入学式メンドい」

「それが本音だよな!?そうだよな!」


そんなんだから友達出来ないんだよぉお!
うるせぇ!テメェもだろうがぁああ!!

その口論は校舎にまで響き渡り、結果的に先輩たちと対面することになるのは数分後の話。




*****




晋助と同じクラスになれなかったのは残念だけど、陽とは同じクラスになれたし、仲良くなれそうな人も沢山出来たので不安はない。

部活は…まだ決めていないけど、運動系じゃなければ、どこかに入りたいなぁ…とポスターを眺めながら晋助のクラスのHRが終わるのを待つ。

「ふぅん…調理部なんてあるんだ。」

cooking!のロゴと可愛らしいキャラクターが描かれたポップを見つめながら、何気なく見つめた。

「お、新入生?」

調理部に興味あったり?という声に断りを入れようと振り返る。そこには銀髪の青年が気怠そうに佇んでいた。

「!」

「楽しいぜ〜調理部は、好きなもん作って食べる。それだけだからすんげぇ楽だし、お金かけずに一食分浮くし、だから良かったら見学だけでも…何か俺の顔についてる?」

銀髪の青年は畳み掛けるように部活を宣伝するが、継実はピクリとも反応しない。

「い、いえ…か、か考えておきます、ね」

それじゃあ、と呟くと回れ右してその場を立ち去る。銀髪の青年は呆然とその行方を見守っているしかなかった。

バクバクバク、全身に血液が巡っているのがこれほどまでに実感出来るとは。
自分の平均体温は高くもなく低くもないが、身体が熱いと認識するのは初めての体験だった。

掲示板があった道から左折すると、ゆっくりと歩幅を小さくする。

「あえ、た…」

漸く、あの時から待ちわびていた人に。

「坂田、銀時…さん」






入学初日


おはこんばんちは。管理人です。
補足が多くなってしまいますが、主人公達はお互い知り合いで既に仲良しです。
ただ、関係としては幼馴染ではないので高杉と陽は知り合いじゃないって感じです。

よくわからんですね。とりあえず今後必要であれば書かれると思います(爆)
ここまで読んで下さり、ありがとうございます。
次回もお楽しみに〜


[back]

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -