02


「…なにやってんだぁ?」
「私部屋案内されてないって知ってました?」
「適当に探せばあるだろうがぁ」
「こんな広い所歩いたら迷子になるわ!」

ぎゃいぎゃい騒いでいた(部屋の外にいても声が聞こえるこいつの声は相変わらず馬鹿でかい)スクアーロが部屋から出てきたので、捕まえて部屋を聞き出す。あとついでに私のぬいぐるみも回収するために。ついてこい、と歩き出すスクアーロの背中を追う。スクアーロの部屋は、さすが幹部というべきか広い。でも物は少なく、ベッドの上にちょこんとおかれているサメちゃんがなんとも浮いていた。なんでわざわざベッドの上なのかと尋ねると、以前はソファにおいていたが、ベルフェゴールのいたずらによって引き裂かれそうになったから、とそっけなく答えるスクアーロ。…脇腹あたりにある明らかな傷跡(縫い跡)はそのせいか。

「お前の初任務は明日、俺も一緒に行く。ついでに資料渡すから頭ん中入れておけ」
「…了解。あんた、これベッドにおいておいてよく寝れたね」
「邪魔で仕方なかったけどなぁ」
「それでも一応大事にしてくれてたんでしょ。まあもともと私のだけどな!」
「あと部屋はこの部屋の右隣だぁ」
「…常々思ってたけど私結構優遇されてるよね?」
「知らねえ奴が隣にいるよりはマシなだけだなぁ。それにお前には一応実績もある。とっととそれもって帰れ」
「じゃあ、明日よろしく…っていえばいいのかな」
「ああ」

さーてとっとと部屋に入って明日の資料を頭に叩き込まなくちゃ。………うわこのサメちゃんスクアーロのにおいがするんだけど。バカスクめ。
がちゃ、と自分の部屋のドアを開けると、なせかベルフェゴールがいた。しししっと独特な笑いで笑うそいつに、私は無言で扉を閉めて、またあける。幻覚などではなく、そこに座っているベルフェゴールにため息をつく。

「…ここじゃなかったっけ私の部屋」
「お前の部屋だよ。面白そうだから王子来ちゃった」
「フホーシンニュー…」
「犯罪者の集まりで何言ってんだか」
「せめて個人のプライバシーくらい守らせてくれないかな!!」

そんなん知らないね、だって俺王子だもん。そういってまた笑うベルフェゴール。はあ、とため息をついてキッチンに向かう。たくさんとは言わないけれど、ちゃんとおいてあるコーヒーや紅茶に安堵した。冷蔵庫の中には材料になるようなものはなかったけれど、料理下手な私にはあっても無駄だろうから寧ろこのくらいが丁度いい。ホットミルクでも飲もうと牛乳を出す。
牛乳に少し多めの蜂蜜。これが私のホットミルクだ。2人分を作って、片方をベルフェゴールに渡す。

「なにこれ」
「名前特性ホットミルク。飲めないんなら飲まなくてもいいけど」
「ふーん」

愛向かいのソファに座り、ちびちびと飲んでいく私。猫舌なわけではないけれど、ちょっとずつ飲むのが好きだったりする。私が飲むのを確認してから(毒なんて入れないよ、馬鹿じゃあるまいし)ベルフェゴールも口をつける。

「どう?おいしいでしょ」
「スクアーロにお前料理できないって聞いてたけど、これは作れんだ」
「ホットミルクくらいならできるわよ」

どんだけ馬鹿にされてんだと思いつつ、ホットミルクを飲む。まずいとかおいしいとかそういう言葉はないけれど、飲んでいるということはまあそういうことだろう。スクアーロは一口飲んで「甘ったりぃ。コーヒー寄越せ」って言ってきたけど。

「王子これ気に入った、ししっ、お前これからも作れよ」
「なんかすっごい上から目線ね。まあこれ位ならいいけど…」
「安心しろよ、飯作れとか言わねえよ。王子死にたくねえし」
「失礼だよねまあ事実だけど!!」

これからこの王子様はことあるごとに私のホットミルクをご所望となるんだけど、その時の私は任務資料を頭に叩き込むことで精いっぱいで、気づくことはなかった。


◇◇◇

「やば…スク!!」

走り出した瞬間に感じる痛み。体が熱くなる。やばいこれ、と思うのは一瞬。名前!!とスクアーロが叫ぶのが、ちょっと遠くで聞こえる。これじゃいつもと逆だなあなんてどこかで思うわたしがいた。

「あっは、もしかして、…これちょっとやば、い?」
「うるせえ喋んじゃねえ!おとなしくしてろぉ!」
「てめえの、が、うるさいでしょ、がっ…傷に響く…っ!」

多分撃たれた…んだと思う太ももを何かで強く締めるスクアーロ。けっこう太い血管部分行ってくれやがってと思うけど、でも脳や心臓だったらそれこそもう私はこの世にはいないだろう。そもそもスクアーロならこれくらい避けられるかもしれないけど。真っ赤な太ももに目をやってから、もう面倒になっちゃって目を閉じた。まあ、何よりスクが無事なら何でもいいや。


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2015.03.13
ごめんなさい今年は5話くらいで終わらせます・・・



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