私たちの定位置T
「高校生と…試合?」
夕飯を食べながらいつものように下らないような会話をする私たち。そんなとき、ふいに日和が「今度練習試合する」と言い出したのだ。
「そ。こっちとしては高校生とやるっていう経験積んで自分の進路に役に立てるため。高校側としては今のうちにいい選手を探しておこうって言う感じじゃないかな」
ふーん、とスープをすする。帰宅部貫いている私からしたらよく分からないけど、高校生とかぁ…。前世では部活はやっていたけど、こういう風に高校生と練習試合…とかはあまりなかった気がするからなぁ。やる種目の差か。
「相手校はどこなの?」
「確か、神奈川の…海常…?ってトコだった気がする」
「神奈川…ふーん、強いの?」
「うん。先生が言うにはあそこはソフトが全国ベスト16には食い込む強豪らしいよ」
「へえ、良く組めたね」
「あっちの監督さんの旧友なんだぜー、すげぇだろ的なやつらしいよ、凛が言うには」
「あー、なるほど。…海常、かぁ…」
どこかで聞いた事のある名前。まあ、私立だったら多くの部が強いだろうし、新聞か何かで知ってるんだろう、多分。
「夜宵も来る?」
「んー、どうせ暇だし良いよ」
「っしゃ!」
あんたを1人で遠出なんてさせた日には、帰ってこなくなりそうだもん、という本音は言わないでおく。まあ、凛ちゃんとか他の部員の子もいるし、大丈夫…だろうけど。
「しーあいっ、しーあいっ!」
前言撤回、…ものすごく心配だ。
◇◇◇
「うっわ、広い!」
ほよはー!とよくわからない声を上げて校内に入ろうとする日和の襟首をつかむ。その際蛙が潰れたような声が聞こえたのは無視。そして、日和の文句も無視だ。
「行くよ、日和が迷子になったら私が困る」
「うー…はぁーい」
子供じゃないんだから…と、溜息もつきたくなるが、まあ、日和の気持ちは分からんでもない。ここ海常は、確かに広く、…まあ、有る程度の年季は入ってはいるものの…きれいな校舎、体育館、他の施設。高校ってこんなとこだっけ?
…私が死ぬ前に通っていた高校を思い浮かべるが、こんなにきれいだった覚えはない。まあ、そっちが普通で、ここが特別なだけなんだろう。…多分。
「んで?集合場所はどこ?」
「グラウンド前…って言われた!」
ちょい待ちー、とバックをゴソゴソと漁る日和。おおかた、そこまでの地図を探しているんだろう。
…少し探す素振りを見せてから、私の方を見て、にっこりと笑う日和に嫌な気しかしない。
「…ちょっと待て、まさかあんた…」
「地図、忘れた」
あは、ごめんよ、と。そりゃもう悪びれもなく言うから、もう怒る気を削がれた。何なのこいつ。
「まあまあ、夜宵良く考えなよ!地図が無くてもグラウンド探せば大丈夫!んじゃまぁ、let's go!」
無駄に良い発音で進む日和。この広い敷地内で迷子にならずにいられるだろうか、いや、無理だ。絶対。
ふと見えた体育館の中ではバスケ部だろうか…。ユニフォームを着た男の子達が、ズラズラと並んでいた。…身長高いなぁ。
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2013 5/20
続きます。プチ連載的な?
分かる人には分かる、クロスオーバーのお話です。まあもう1人は全く出てませんがね!次に!多分…!!
もう日和と夜宵の話になってる気もする。ごめんなさい。
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