あなたの側で
「ボスー、帰りましたー」
任務を終え、ボスに報告しようと執務室のドアをノックした。まあ返事がないのはいつもだから勝手に入る。
「…名前か」
「うん。ただいま、ボス」
「おい、その呼び方を止めろと言わなかったか」
「公私混同はしませんと言った筈だけど」
すると、チッと分かりやすく舌打ちを一つしたあと、「さっさと報告を済ませろ」と何ともオレ様発言。わかりましたわかりました、と報告書をおく。
「これが報告書。敵アジトは壊滅で、任務成功です」
そんなにグダグダ言っていても仕方がないから手っ取り早く簡潔に伝える。大切なことは報告書も書いてあるしね。
「名前、来い」
「はーい ボスー」
とりあえず、報告を終えたって事は私の仕事が終わり、フリータイムになったというわけだ。普通なら、隊員でも幹部でも報告終わらせたらとっとと自室に行くなりしてゆっくり休むことだろう。でも私は違う。
「ボスじゃねえだろ、てめえは既に任務を終えたんだ」
「分かってる分かってる。冗談だよ、ザンザス」
「フン。…怪我はねえか」
「ないよー!私を誰だと思ってんの?」
「ハッ!言うようになったじゃねえか」
へへーん、とザンザスの膝の上で、少しアルコールのにおいのする彼にもたれながら笑う。そう、此処まで来れば分かると思うが、私はザンザスと付き合っている。…周りからは不似合いだとか言われるけど、それに、信じて貰えないけど向こうからなんだよ。
…そのお話は置いておくとして。
「次の任務は何処?」
何となく聞いてみた。最近休みが多くはなくて、時間があるようなら睡眠取ろうかと思ったから。でも、返ってきたのは予想もしないような答えだった。
「次、はねえ」
「え?」
「お前には任務を出さねえって言ってんだ」
「いや、わかんないから。何でいきなり!?」
そんな外されるようなミスもヘマもしてないよね!?とザンザスに詰め寄る。返ってきたのもまたまた意外な答えで。
「お前がオレの物になったときに言った筈だ、完全にオレのになったら任務には行かせねえと」
確かに言われたけど。でもはっきり言ってその意味がよく分からなかったんだよね。私はもうザンザスのって思ってたから。
「それって、どういう事なの」
少し棘を含んだ言い方になってしまったが仕方がないだろう。しかし、私の言い方がお気に召さなかったのか眉間にしわを寄せて睨まれた。
「…そこの引き出し。二番目の開けてみろ」
そこ、と顎で示された先の引き出し。言われるとおりに膝から降りて取りに行く。なんだってんだ、全く。
「これ?」
そこにあったのは濃いめの赤い箱。掌に収まるくらいだから、アクセサリー…あ、リングかな?と開けようとすると持って来い、と言われてしまった。
仕方がないからさっきの所まで戻る。トス、と今度は脚と脚の間に座り、はいこれ、とさっきのそれを渡す。
「ねえ、これなあに?新しい戦闘用リングとか?」
「…カスが」
そういってザンザスが開けた箱の中には小さいながらもきれいな赤…紅?の宝石のついた指輪だった。そして呆然とする私の左手を取り、薬指にいれる。あらまぁサイズぴったり…なんて!
「ザンザス!?え、どういう…!?」
「てめえはずっとオレの元にいろ」
これって、どうみてもプロポーズだよね。感極まって涙腺がゆるむ私。なんとなく照れくさくなり、ぎゅ、と抱きつく。
「私で良い…の?」
それでも不安なモノは不安で。恐る恐る聞いてみる。すると、言葉には出さないけど当たり前だというように抱き締めてくれた。
「ザンザス…大好き!」
こんなこと言ってもカスがってバカにされるだけだろうけど。
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薔様、リクエストありがとうございました!
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