遠回りなきみ  


「あー疲れた眠いお腹空いた…」

2日間に渡る任務を終えて、アジトに帰ってきたのはお昼前。ボスに報告と報告書の提出を終えて自室に入る。幸い、次の任務は明日だし、やらなくちゃいけない事も終わってるから今日はゆっくり休もう。

「ふーとん…」

ドス、とベッドになだれ落ちた。ゲロッ!…え?

聞こえるわけ無い、蛙が潰れるような声。疲れているからだろうか、幻聴まで聞こえるらしい。いくら恋人とはいえ、まさかここに、フランがいるわけ…

「なんですか、名前ー。ミー寝てたんですけどー」

いた。いちゃったよ。あれ、でもなんでここに?

「此処って誰の部屋?あれ?寝ぼけてフランの部屋入っちゃった?」
「名前の部屋でしょー。っていうか、疲れて帰ってくる恋人待ってるのってダメなんですかー?」
「いや、いいけどさ。めずらしくない?」

私がフランの部屋で待つことはあっても逆はあまりない。嬉しいから良いんだけどね。

「そういう気分だったんですー。ほら、疲れてるんなら入ってくださいー、暖めてあげますー」

まあ、それ私の布団なんだけど、なんて思いながらも布団に入る。あったかい。布団に入った瞬間襲ってくる睡魔。逆らう気なんてさらさら無いからなすがままってかんじ。
フランがぎゅっとしてくれたのもあり、本当に直ぐ寝られそう。最後に覚えているのは、フランが優しく髪を梳きながらおデコにキスしてくれたことだった。

◇◇◇

「んぶ…」

顔が何かでふさがれ、窒息しかけて目が覚めた。何この目覚め、最悪…と寝ぼけた頭で考えたのはほんの一瞬。だって、フランが抱き締めてくれていたから。埋まってる感じだもん、そりゃ窒息するわ。

息をし易くするために体を動かしたせいか、フランが目を開けた。

「ん…名前…起きたんですかー」
「おはよ、結構寝たね」

ふぁーあ、とあくびをするフラン。ちょっと待て、女の私より可愛いって何なわけ。

「そんなの知りませーん。…名前、お腹すきましたー」
「作れって言うのね、言ってるのね!」

あんなじーっとみられたら、作らなくちゃって気持ちにさせられるじゃない。まぁ面倒くさいからフレンチトーストでいっかなーと考えながら布団を出る。

卵と牛乳はあったはずだから…と冷蔵庫を開けると、入れた心当たりのない白い箱。でも、よく見ると見覚えはないわけではない。私の好きなケーキ屋さんのそれだ。中を見ると、私のお気に入りが2つ、フランのお気に入りも2つ入っていた。

「フラン、もしかして…」
「ああ、昨日の任務で近くを通ったんで、ついでに買ったんですー」
「そっか、ありがとう!」

フラン、私知ってるよ。フランの任務先はこの店と遠くて帰るときも通らないって。素直に言ってくれればいいのに。まあ、それも含めてフランだから良いんだけどね。

(いただきまーすっ!…ん、おいしっ!)(付いてますよー、クリーム)(え、ウソ何処!?)(ここですー、ちゅ)(ちょ、ふ、ふら…!)


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黒猫様、リクエストありがとうございました!

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