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□このトキメキは許されますか?




部活帰り、何だか無性に涼みたくなり、遠回りをして普段はあまり通らない河川敷を歩いた。
何気なく流れる川を眺めていると…
「あ……」
後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。
振り返ると…そこにはやっぱり見覚えのある少女が立っていた。

「えと…佐久間、さんですよね?」
こんにちは、とその少女がぺこりと頭を下げると青みかかった癖のあるショートボブがふわりと揺れた。
赤いフレームの眼鏡を頭に乗せたこの少女は確か…

「雷門の…マネージャー…」
「はい、音無春奈って言います。先日はお疲れ様でした!」
ハキハキとして笑う姿がこの前見た時、試合中ベンチの中でずっと険しい顔をしていた彼女と随分違って見えてドキっとした。
「あ…ああ、お疲れ。」

そんな何でもない挨拶程度のやり取りをすると、彼女…音無春奈は辺りをキョロキョロ見渡し始めた。

「…?どうかしたのか?」
「え!?あ、いえ…その……一緒じゃないのかな…って…」
目を右往左往させながら苦笑いする彼女に俺はピンと来た。
「……ああ、鬼道か?」
どうやら的中したらしく、彼女は顔を赤く染めた。
そうか…俺が思ってた通り、彼女はやっぱり鬼道の恋人なのか。
この間の試合の後、二人が抱き合ってるのを見かけてしまい鬼道にそんな相手が居るとは知らなかった為に大きな衝撃を受けたが…やはりそうだったのか。

「…あの…足、大丈夫そう、ですか?」
「ん?鬼道のこの前の試合の時の怪我の事か?…まあ、たいしたことはない様だが…今は一応控えに回って安静にしているよ。」
「そうですか…」
大丈夫さ、と伝えると彼女はほっとしたように息を付いた。
「…気になるなら自分で聞いたらいいのに。」
そう言うと突然彼女の表情が曇った。
「あ…いえ、私は…」
言葉に詰まり、次第に彼女は俯いてしまった。
何かマズイ事を言ってしまったのだろうかと内心焦った。
「…あの時、酷い事を言ってしまって……今はまだ、少し気まずいというか…」
「…ケンカか?」
「…いえ、私が一方的に酷い事言っちゃったんです…知らなかったとはいえ、私の為に頑張ってくれていたのに…」
そう言い、彼女は更に深く俯いた。
鬼道が何かの為に頑張っていたのは俺も知っていた。
そうか、彼女の為だったのか……
「…鬼道はそんなの気にする奴じゃない。大丈夫さ。」
俺がそう言うと、彼女はキョトンと数回瞬きをした後
「……はい、そうですね。」
と、顔を上げてクスッと嬉しそうに笑った。
すると突然脈拍が上がり始めた。
つまりときめいた。
いやまて俺、それは駄目だろう……この子は鬼道の……
「佐久間さん、すみませんがお兄ちゃんに伝えて貰えませんか?時間がある時にちゃんと話したいから連絡頂戴、って。」

…思考が停止した。
聞き間違えだろうか…いや、さっき確かに…
「…………お兄ちゃ、ん?」
お兄ちゃん?鬼…いちゃん…?いや違うだろ!俺は何を……
一人頭の中でボケとツッコミをかましていると彼女はふふ、と笑った。
「お兄ちゃんに佐久間さんみたいに解ってくれてる友達が居てよかったです。佐久間さん、兄の事これからもよろしくお願いします!」
満面の笑みで頭を下げる彼女……
兄………おかしい、話の流れ上これだと彼女は鬼道の事を兄と呼んでいる事になるが……と、瞬間…思い出した。
鬼道は確か前に、自分は鬼道家の養子だ…と言っていた………じゃあ彼女は…

「あの…鬼道の、妹…さん」
恐る恐る混乱した頭で紡ぎ出した言葉を発してみる。
もしそうならば俺は…

「あ、春奈でいいですよ」

そう微笑む彼女に、ときめいてもいい、と言う事だろうか。



※※※※あとがき※※※※
相も変わらずgdgdですぜ
もう開き直るんだぜ←

…んーと、二回目の帝国戦のすぐ後くらいのイメージで。
試合後のあの兄妹の抱き合ってくるくるしてたトコを実は見てしまっていた佐久間が二人は恋人同士だと勘違いしてたら…私が萌えるなぁ、と←
この辺りではまだ佐久間は鬼道さんのシスコンぶりを知らないといい。
徐々に知る羽目になるといい…ふふ←

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