inzm | ナノ

□吹春で七夕ネタ





「晴れるといいなあ」
ぽつり、窓の外の夜空を見上げて呟いた。
「ん?何が?」
「天気です。明日は七夕ですから、晴れないと二人は会えないじゃないですか」
年に一度なんですから、会えないと悲しいですよ、と私が残念そうに言えば吹雪さんはそういえば明日は曇りの予報だったね、と苦笑していた。
「ねぇ、春奈さんは僕に会えなかったら悲しい?」
「…そりゃあ、悲しいですよ」
彦星と織り姫みたいに引き離されたわけでも一年に一度しか会えないわけでもないけれど、私と吹雪さんも会いたい時に会う事はそう簡単には出来ない。それほど私の住む稲妻町と吹雪さんの住む北海道は遠い。だからやっぱり、年に数回会える機会に会えないのは凄く悲しい。
「そっか。じゃあ僕は雨が降ったって槍が降ったって、例え明日の飛行機が飛ばなくったって必ず春奈さんに会いに行くよ」
「槍って…頼もしい彦星ですね」
「大好きな織り姫の為ならなんてことないさ。全部かわしてみせるよ」
吹雪さんならそれくらい本当に出来そうだなあ、と思ったら何だか可笑しくなってつい笑ってしまった。それに七夕は確か橋を渡って会いに行くのは織り姫の方だった気がするが、まあ黙っておこう。でもさすがに飛行機が飛ばなかったら無理ですよ、そう苦笑すると受話器の向こうで吹雪さんはいつもの様に柔らかく笑った。
「それでも行くよ。だって僕は春奈さんの彦星だからね」




20120707
七夕のお話はあまり詳しくないんですが…確か引き離された夫婦だったと…

3ページ/35ページ