inzm | ナノ

□競争率の高い君




風丸視点(風→春)


雷門中1年、サッカー部マネージャー兼、イナズマジャパン専属マネージャー音無春奈…
イナズマジャパン、天才ゲームメーカー鬼道の妹。

容姿は結構…と言うか正直かなり可愛い。
黙っていれば大和撫子そのものだがハキハキと元気な声とコロコロ変わる表情はとても賑やかで「やかまし」なんて呼ばれる事もある。それに加えてかなり行動的だ。
だけど、そこが彼女の魅力的な所だと俺は思う。

そんな彼女は相当モテる。
学校でもよく告白に校舎裏という何ともベタな呼び出しを幾度もされているし、今このイナズマジャパン内でも彼女に想いを寄せる選手は少なくない。
ぶっちゃけ俺もその一人だ。

「音無さん、ごめん絆創膏くれるかな?」
そう音無に近寄ったのはヒロトだ。最近小さな傷を作っては音無に絆創膏を貰いに行く。
今日は肘か…見た感じ放っておいても別に気にならない程度の傷、多分目当ては絆創膏じゃなくて…
「あ、じゃあ消毒しないとですね!ここ座って下さい」
音無は自分の隣に座るようヒロトを促し消毒を始める。
「いつもごめんね?」
「いいんですよ、これがマネージャーの仕事ですから!」
手際よく音無はヒロトの擦り傷の処置をこなす。
いつも思うんだが、絆創膏を貼って貰うその距離…近くないか?

「春奈さーん、ごめんアイシング貸して貰える?」
ヒロトが去ったと思ったら次に音無に近付いたのは吹雪だ。
いつもタオル取ってとかドリンク頂戴とかどうでもいい用で音無に近付いて来るが、今日はアイシング?
「どうしたんですか?」
「ちょっと足首捻っちゃって…あんまり痛くはないんだけど一応冷やしとこうかなと思って…」
「大丈夫ですか!?ダメですよちゃんと処置しなくちゃ…見せて下さい!」
大丈夫だよ、と苦笑する吹雪に本当に怪我でもしたんだろうか?アイツは特に病み上がりだから心配だな、と思っていると…
「あ、やっぱりちょっと痛いかも…春奈さん肩貸してくれる?」
そう言って「あ、はい!どうぞ寄り掛かって下さい」と心配そうにする音無の肩に吹雪は腕を回す。
…ああ、嘘だな。
下心丸出しじゃないかあの野郎。

その次は立向居、佐久間、不動、豪炎寺…たいした用事もないくせに何かと口実を作って音無に寄って行く。
これが毎日。
多分、いや…確実にアイツらは音無に好意を抱いてる。見るからに。
気付いてないのは音無本人くらいだろう。

本当に、どいつもこいつも……全く、競争率が高くて嫌になる。
そのうち静かに戦場にでもなりそうだな…

「風丸せーんぱい」
不意打ちで顔を覗き込まれて思わず跳び上がった。
「おと…音無!?」
「難しい顔してどうしたんですか?」
「あ、いや…何でも…。音無は何か用か?」
「いえ、先輩が難しい顔してたので…具合でも悪いのかと思って」
水分取ってます?と音無が差し出したのはドリンクのボトル。
「…悪い、ありがとう」
それを受け取ると、音無は「いいえー」と笑った。
やっぱり音無は可愛い。
周囲から突き刺さるいくつかの視線を感じながらそう思った。

とりあえず俺は、嫌でもあの静かな戦場に成り兼ねない中に飛び込まなければいけないわけだ。


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旧拍手文です。

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