inzm | ナノ

□あながち間違いではないらしい




※星座捏造



「吹雪さんて、何座ですか?」
「…射手座、だけど?」
早朝、食堂に入るや否や、一人テーブルで雑誌を読んでいた春奈さんに挨拶よりも先にそう声をかけられ、彼女に近付きながらそう答えた。

「えーと、射手座はー、あ!健康運が五つ星です!」
いつもは頭にかけているメガネをしっかり目の位置に下ろして雑誌を見つめた春奈さんが、よかったですね!と元気に拳を握った。
「ああ、星座占い?」
彼女が真剣に見つめていた雑誌を覗き込むと、ファッション雑誌の中の占いの特集だった。
女の子って、占いとか好きだよなあ…果たしてこんな五つの星でそれぞれの星座の全ての人の運勢が決まるもんなのだろうか。

「金運もいいですよ!あ、でも恋愛運はイマイチですねー、星一つです」
運勢を見ながらコロコロと表情を変えて楽しそうに話す春奈さんに、占いはどうあれその姿は微笑ましいな、なんて思っていると、「“好きな子を口説いてもスルーされるかも”ですって」と、あちゃー、大変ですよ皇子!なんて悪戯っぽく彼女は笑う。
スルーされるのはやだなあ。

「ラッキーカラーは赤ですって」
「ふーん、じゃあ春奈さんは何座?」
彼女の手から雑誌を拾い上げて聞いてみると、春奈さんは目にかけていたメガネをいつもの定位置の頭にひょいと持ち上げた。
「魚座ですー。恋愛運バッチリなんですよ」
にこにこ嬉しそうにVサインをして話す彼女。
魚座の恋愛運に目をやると、「想い人と一歩前進。親密な関係になれるでしょう」とありきたりな事が書かれていた。
春奈さんでもやっぱり恋愛運とかを一番気にするんだなぁ…とか失礼な事を思ったのは、きっと彼女は普段あまりそういう事に興味があるそぶりを見せないからだろう。
「ふーん…あ、」
雑誌のある項目に目を止めてふと声をあげると「どうしました?」と春奈さんは首を傾げた。

「…ね、春奈さんのそのメガネ…一日貸してよ」
「え?ああ、ラッキーカラーですね!いいですよー」
そう言って射手座のラッキーカラーだと言う赤いフレームのメガネに手をかけた春奈さんの手にそっと触れると彼女は目をぱちぱちと瞬かせた。
「ていうか、今日一日僕と一緒に居てくれない?」
「…え?」
キョトンとする春奈さんに雑誌を向けて見せる。
「ほら、僕のラッキーパートナー。魚座の人だから赤いメガネをかけた魚座の春奈さんがぴったりじゃない?」
あ、て言うかこの雑誌は月刊?じゃあ少なくとも今月中はずっと一緒にいて貰わないとなあ…出来ればその後もずっとがいいんだけどね。
そう付け足すと春奈さんは「な…え!?いや、あの」と顔を真っ赤にしてわたわたしていた。
そんな彼女を見て僕が思わず吹き出して「あれ?スルーしないの?」と笑うと「もう!吹雪さんのいじわる!」と頬を膨らませて触れていた僕の手をきゅっと握り返してくれた。

「射手座の恋愛運、イマイチどころかバッチリだけどなあ」
やっぱり占いなんてあてにはならないな、と雑誌をぴらぴら眺めて僕が笑うと春奈さんは「そうですか?私は結構当たってると思いますけど」と頬を少し赤く染めてふにゃ、と笑った。



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すみません星座捏造です
自分の中で何となく吹雪は11月か12月生まれ、春奈は3月生まれなイメージなので…
でも吹雪は双子座でもクリスマスな山羊座でもいいですね

ちなみに私は占いは信じない方ですが気にはなります

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