inzm | ナノ

□貴方にならば、見せてあげるわたしの…




買い出しの最中。
ふと目に止まったショーウインドーの向こうの色とりどりの水着。
水玉やボーダー…様々な柄の生地にリボンやフリル等があしらわれたビキニやワンピース。

「海、いいですねぇ…」
ジリジリ照り付ける太陽の下、買い物袋を抱えてショーウインドーにかじり付いた。
ライオコット島のビーチはとても海が綺麗で、波も高くない。
練習中にも時折ビーチから楽しそうな声が聞こえる。
「こう暑いと泳ぎたくなります…」
そうだ、今度の休日は皆を誘って海に行こう。
額に滲む汗を拭いながらそう呟くと、買い出しに付き合ってくれている吹雪さんが「そうだね、いいかもしれない」と爽やかに笑って隣に立ち、ショーウインドーに飾られた男子中学生には刺激が強そうな露出の多い女性用の水着を顔色一つ変えずに見ていた。

「…吹雪さんはどんな水着が好きですか?」
「え?うーん……」
そうだなあ…と飾られた水着を見渡して「こういうのかな?」と吹雪さんが指差したのは淡いピンク色の生地で胸元には大きなリボン、下はひらひらとした2段のティアードタイプのスカートが付いたビキニだった。
「…じゃあ私、こういうのにしようかなぁ」
ぽつりとそう言うと隣から「え!?」と声が上がる。
隣を見ると吹雪さんは何やら難しい顔をしている。
「…それってもしかして皆で行く時?」
「…え?そうですけど…」
その問いに、私が肯定の言葉を返すと、吹雪さんは
「じゃあやっぱりダメ」
と苦笑して言う。

「に、似合わないですか?」
そりゃあ今水着を着ているマネキンの様なスタイルは持ち合わせていないが…何もそんなハッキリとダメなんて言う事ないじゃないか……と落胆していると
「ううん。凄い可愛いと思う。でも…」
「…?でも?」
ちらりと私を見た吹雪さんは一拍置いて
「春奈さんの水着姿は僕以外には絶対見せたくないから、ダメ」
そう言い歩き出した吹雪さんは耳が赤くなっていた。
だけど多分、私の顔はそれ以上に赤いと思う。
しばらく開いた口が塞がらなかったが、すぐにすたすた進む吹雪さんを小走りで追いかけた。
「そ…そうですか。じゃあ、ああいうの着るのは…二人だけで行く時にします」

そう言うと、吹雪さんは「うん」と小さく返事をしてやっぱりジリジリ照り付ける太陽の下、グランドの近くまでお互い荷物を持っていない方の手を繋いで歩いた。

皆で海に行く時はなるべく露出が少ない服みたいなやつにしよう。
そんな事を考えながら。




……あとがき…………

夏っぽい話をサルベージしてきました。
何故か真冬に思い付いたネタ……

吹雪くんは水着とか耐性ありそうだなあ…でも春奈ちゃんの水着姿にはドキドキしてたらいいなあ…と言う私の脳内←
変態っぽい残念でがっつりな吹雪くんも好きですが、好きな子には純な吹雪くんやへたれな彼も好きです
つまり何でもおいしいわけです←

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