inzm | ナノ

□その笑顔がみたいが為に




「あれ?木暮くん」
もう薄暗い空の下、河川敷に一人佇んでいると名前を呼ばれた。
「音無…」
振り返ると、よく知る顔がこちらを覗き込んでいた。
「今仕事帰り?」
お疲れ、と音無は笑った。
こういう表情は昔と変わらない。
「…お前も?」
立ち上がってそう聞く。
まあ、今こんな所で会うんだから仕事帰りなのは明白なのだが…
「うん、ちょっと遅くなっちゃったけど…」
するとやっぱり分かりきってた答えが返ってくる。
それにふーんと適当に返事をする。

「…そういえばさ、お前ら今上手く行ってんの?」
あ、言うつもりなかったのに…つい口から出る話題。
「…え?」
音無は何の事か分からない…とポカンとした。
「…あいつ、最近まともにお前と連絡取れないって嘆いてたぞ」
あーあ…教えちゃったよ…
教えないで関係悪化させる事も出来たのに…
でも、だってあいつが…情けない声で電話なんかしてくるから…、しかもその度に3時間は話聞かされてうんざりなんだよもう…

「え!?うそ!?」
ぎょっとして音無は声を荒げた。
「なんで嘘だよ…忙しいのは分かるけど、あんまり放っとくと浮気されるぞ」
ため息をついて嫌味っぽく言ってやる。
もちろん冗談だ。
あいつにそんな度胸ないのは知ってるし、そもそもあいつが音無以外を好きになるのが考えられない。
ムカつくくらい一途で昔から音無にぞっこんだからな。
ホント、ムカつく。

すると音無は更に声を荒らげる。
「な!?ゆ、勇気くんはそんな事しないわよ!!!!」
そう言いつつも音無の顔は青ざめている。
おいおい…言ってる事と表情が合ってねえよ。
もしかして有り得るかもとか思ったのか?
もっと信用してやれよ…

「…冗談だよ。とりあえず、短くてもいいから電話とかしてやれば」
「う、うん…そうする…」

まったく、世話が焼ける奴らだ。
なんで俺が協力しなきゃならないんだ…
そう思いながらも
「木暮くん、教えてくれてありがとう」
と、笑う音無にきっとこれからも何だかんだでこいつらに世話を焼いてしまいそうな自分が居て心底嫌になった…



あとこれは余談だが…その夜あいつから電話があった。
またかとげんなりして電話に出るや否や、声を荒げて耳がキーンとする程の声量で立向居は一気に話し出した。
『木暮、木暮ー!やったよ春奈から電話があったー!!!!一週間ぶりだよ!!!!』
……いい事があっても3時間、今度は惚気話を聞かされた。
……って言うか、たったの一週間だったのかよ!




……あとがき……………

すみません…
悪あがきです………

公式でCP確定してしまい、ちょっと並々ならぬ衝撃を受け……でも諦めきれずに書いてしまいました…
嫌いじゃないんですよ…木春…でも…私的には違うんです…OTZ
姉弟っぽい二人が好きなんですよおお…

こんな展開にならないかしら

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