inzm | ナノ

□つまり彼にデレは必要ないって事




「ねー」
後ろのベンチで頬杖を付いてつまらなそうにする彼を横目に作業を続ける。

「ねーってば」
無視無視。

「ねーえー」
無視……

「はーるーなーさーん」
「っもう!さっきから何ですか!?」
思わず返事を返してしまった。
「あ、やっとこっち向いた」
するとずっとつまらなそうにしていた吹雪さんが、ぱあっと笑顔になった。
「……何です?私今部員の出席チェック取るのに忙しいんですけど」
そんな彼を見て私も気を緩めそうになったが、気合いでツンと返す。
いけない…ここで優しくしたらすぐに調子に乗るんだからこの人は。
「…何か春奈さん冷たいなあ」
その落ち込んだ声色にズキ…っと良心が痛みながらも更にツンで返す。
「…気のせいですよ」
「あっ!また…もー、ちょっとは構ってよー」
作業に戻った私の背後からいきなり抱き着く吹雪さん。
「な!?何するんですか吹雪さん!!!!」
「だって春奈さん全然僕の相手してくれないんだもん」
小さい子供みたいに頬を膨らませる彼…
ああもう!この人はいちいち母性本能をくすぐってくるんだから!
だけど今はそれどころじゃない。
「もー!仕事中です、やめて下さい!生徒が見てるじゃないですかあ!!!!」
そう。
今は部活中。
多くの生徒がグランドを駆けながらもこちらをちらちら見ている。
「いたたた…酷い春奈さん…もう僕の事なんて嫌いになったんだね」
後ろから私を所謂あすなろ抱きをしていた吹雪さんの手をギリギリと抓ると、彼はベンチに戻りうなだれた。
極端にも程がある。
「何でそうなるんです!もう、しょうがない人ですねぇ…大体、急に会いに来たのはそっちでしょう?」
平日に会いに来るなんて…仕事はどうしたんですかもう!
と、これは心中で。
「え、行くって電話で言ったじゃない」
キョトンとして言う吹雪さんに…私は呆れる。
「…今日の朝、急にじゃないですか」
「…そうだっけ?」
そう吹雪さんは爽やかに笑う。

ねー、ねー、と更に駄々をこねる吹雪さんに、ため息をつく。
「…はあ、もうすぐ部活終わりますから…あと少しだけ待って下さい。そしたら買い物行きましょう?吹雪さんの食べたい物何でも作ってあげます」
私だって本当は嬉しい。
遠距離な上にサッカー部は今や雷門の象徴…土日も部活なんてしばしばでなかなか会えない…。
だけど今日は…急過ぎて気持ちが着いていかない。
素直になれない……周りに見られてると思うと余計なのかもしれない。
だから、部活が終わったら素直になろう…と思っていたのに…彼から返って来たのは「一番は春奈さんだよ」だった。

「……馬鹿言ってないでそこで黙って大人しくしてて下さい」
もう少しツンでいてもいいのかもしれない。
いや、きっとツンくらいが今の彼には丁度いい。




……あとがき……………

10年後吹春にときめいた結果。
キリリク絵に合わせて書いたものです……

ツンツン春奈に残念な吹雪くん……
あすなろ抱きって知ってる人いるんかな?
こないだ何かの少女漫画で見たから使ってみた…
ドラマやってた時私幼子だったから見たことないんだけど…あ、何かのバラエティー番組で見た事あるかな?
あとコントとかで……


てか吹雪くんまじ職業何だ…
あ、春奈ちゃんのヒモ?
なるほどわかります←

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