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□雨あめ降れふれ




「風丸先輩、ボールお願いしてもいいですか?」
そう言って彼女がロッカーから引っ張り出して来た巾着袋は、サッカーボールが10個は入りそうな程の巨大さ。
「ああ、わかった」
その巨大巾着を受け取り、部室内の小窓から空を見上げる。

しとしとしとしと…
外では冷たい雨が降り続く。
グランドは使えない為、今日は室内での部活動になった。
幸い、体育館のコートを半分借りれる事になり、練習に必要な道具を部室から運ぶ。
ジャンケンで負けた俺と音無の二人で。


「ううー…」
サッカーボールを必要な分だけ巨大巾着袋に詰めていると、隣で何やらうめき声が聞こえた。
「…どうかしたのか?」
カゴにドリブル練習用のポールやらネットやらを詰め込んでいた音無を見ると、その場にしゃがみ込み髪を抑え付けて呻いていた。
「私、雨って嫌いです…」
「…そりゃあ…好きな奴のが少ないんじゃないか?」
外で部活できないし、と言うとキャプテンは雨でも練習してたって木野先輩に聞きましたよ…と返って来た。
いやまあ…あいつは特別だ。

「…頭でも痛いのか?」
先程から頭を抱える音無…
雨の日は頭痛でもするのだろうか?と心配になり腰を降ろして顔を覗き込むと、じと…っとした目でこちらを見て来た。
その目に少し怯む…と、音無は深いため息をはあ、と吐き出した。
「いいなあ…風丸先輩は……綺麗なストレートで…」
「………は?」
ストレート?
何の事だろう…そう疑問に思っていると
「私くせっ毛だから雨の日は凄いうねっちゃうんですよね…」
くるんとカールした毛先を指で恨めしそうにいじりながらまた深いため息を一つ。
ああ、ストレートって髪の毛の事か。

「そうか?」
「どうせ天然パーマなら夏未さんみたいに綺麗なパーマがいいです…」
ムスっと拗ねた幼い子供みたいな顔をした彼女に、ゆっくり手を伸ばした。

「…俺は音無の髪、好きだけどな」

そっとくるんと巻かった毛先に触れる。
俺の行動にキョトンとした音無のふわふわと柔らかい髪を抄いていると、彼女はくすぐったそうに首をすぼめた。
その姿が堪らなく愛おしくて、髪を抄きながら彼女の後頭部に手を回し少し強引に引き寄せた…

触れた唇が離れると、目に映るのは真っ赤な顔の音無。
俺も多分、同じ様な顔してるんだろうけど。

「…雨の日、やっぱり好きかもしれないです…」
そう小さく呟いた音無を、俺が不思議そうに見つめると恥ずかしそうに
「先輩が、触ってくれるから…」
えへへ、と頬を赤く染めた音無が笑う。
そんな可愛い顔でそんな事言われたら…歯止めが効かなくなるじゃないか。
どくどくと興奮する心臓を抑え、とりあえずさっきより深いキスをした。

ああ…早く体育館に行かないとならない事が恨めしい…
なんて思いながら。



……あとがき……………

うーん……
うん、何これ。
とりあえず梅雨…なのでね…雨ネタを……

周りには内緒でお付き合い済み前提。
なんだかむっつり丸さんになってしまった…←
しかし中学生だもの!
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