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□午前1時の勉強会




ふと時計を見ると、時刻は深夜1時を回っていた。
はあ…と深いため息を一つ、私は一人食堂で問題集の難問に苦戦していた。
その時…

「何してるの?」
突然背後から声をかけられ思わず飛び上がった。
「きゃあ!?」
短い悲鳴を一つ、後ろをそろりと見ると目を丸く見開いた吹雪さんが立っていた。
「ご、ごめん…驚かせた?」
「ふ…吹雪さん…ビックリしたぁぁ…」
私が気の抜けた声を出すと吹雪さんは「あはは、ごめんね」と笑って言いながら私の隣の椅子を引いて腰を降ろした。

「それ、春奈さんの課題?」
机の上に盛大に広げられた問題集を指差す吹雪さん。
思わずため息が出た。
「はい、部屋だとなかなかはかどらなくて…吹雪さんは進んでます?」
日本代表として世界に挑んでいる私達だが、あ、私はマネージャーだけど……それと同時にメンバー全員、まだ義務教育中なのだ。
授業に参加出来ない分の課題が選手とマネージャー、それぞれ用意されているのだが…それがまた…直視するのも嫌になる程の量で今まで意識的に避けていた。

しかし、今週末に指定された途中経過を提出する事になり無理にでもやらざるを得なくなった。

「僕は終わってるよ」
「えっ全部ですか!?」
「うん。練習や試合に集中したいからね、この前時間が空いた時にヒロトくんと風丸くんと一緒に片付けちゃった。」
そうにこやかに吹雪さんは言う。
私はまたため息をついて、要領いいなぁ…と呟く。
この分だと、キャプテンや綱海さんはともかくお兄ちゃんや豪炎寺さんも終わってそうだ…。

「あ、春奈さんそこ違う。」
私のノートを見ていた吹雪さんがある問題を指差した。
「えっ、何処ですか!?」
「ここ。これはこうして…こうだから、プラスになるんじゃない?」
近くのペンを取り、メモ用紙にさらさらと式を書いて説明してくれる吹雪さん。
「あ、そっか…」
なるほど、と答えを書き直し、「あの…吹雪さん…これも、聞いていいですか?」と、そのまま苦戦していた問題を指差す。
「いいよ。えーと、これはね…」
そう彼は優しく笑いながら説明を始めた。
近付く距離にドキっと心臓が跳ねつつも、問題に集中する。

メモ用紙にさらさらさらさらと式を書いて丁寧に解りやすく説明してくれる吹雪さん。
いつの間にか私は、その白く綺麗な手に思わず見とれてしまっていた。
「…春奈さん?」
「うあ!?す、すみませ…もう一回いいですか?」

「大丈夫?眠くなっちゃった?」
「だ、大丈夫です。えと、これをこうして…」
まさか、貴方の手に見とれてました。なんて言えるわけない。

「うん、そう。で…」
「あ、こうですね!?」
「うん、正解」
ときどき吹雪さんの長い睫毛や白い肌に見とれつつも、目標までなんとかあと数ページで終わる、というところまで来た。

よし、次だ!と意気込むと「ふふ」と、隣の吹雪さんが笑う。
「…?何ですか?」
吹雪さんを見ると、机に頬杖を付いてニコニコしていた。
「いや、こうやって毎日春奈さんに会えるのって幸せだなぁって思って。」
「……へ!?」
突然、余裕の表情でとんでもない口説き文句を発する彼に私は赤面した。

口をぱくぱくさせて真っ赤になる私を見て吹雪さんはとても嬉しそうに微笑む…
「…ね、喉渇かない?お茶煎れてくるよ」
しばらくそんな私を見ていた吹雪さんは、すっと立ち上がりキッチンへ向かう。

いつも余裕な吹雪さん…
私はその背中を追いかけ、ぎゅっと抱き着いた。

「は…春奈、さん?」
でも知ってる…吹雪さんは、ああいう台詞を余裕な顔で言ってのけるけど…本当は……
背中に顔を埋めると、ドクドクと速く大きく、心臓が脈を打っているのが分かる。

「…バレた?」
「…耳赤いですよ?」

「そこはスルーしといて欲しかったな。」
吹雪さんはあはは、と笑う。
「…いつも私だけドキドキさせられたままなのは悔しいですから。」
ぎゅうう…と抱き着く腕に力を込める。
すると、吹雪さんの耳は一層赤くなる。
それを見て私は嬉しくなった。
私だって吹雪さんを赤面させる事が出来るのだ。

「あの、春奈さん…この状況は誰かに見られたらマズくないかな?」
「今何時だと思ってるんですか?誰も見てないです。」
そうかな…と言う吹雪さんは私の手を解き、向き直っる。
私の顔にかかっていたメガネを優しく取り上げると、吹雪さんの顔が近付く。
短いリップ音を立てて唇と唇が触れ合い、離れる。

そのまま離れ様とする吹雪さんの服の裾を掴む。
「…もっと」
恥を忍んでそうねだるも彼は悪戯っぽい笑みを浮かべて「課題が終わったらね。」と言った。
分かりました…じゃあ…

「…すぐ終わらせてみせます!」


本気を出した私は凄いんですよ!
…と、言ってはみたものの…見事に一問目から躓き、また吹雪さんのお世話になった。



…………あとがき…………

途中からどうしていいかわからなくなった…OTZ

ちなみに既に付き合ってる設定です。
さらっと春奈を赤面させる様な凄い事言うけど、実は自分もかなりドキドキしてる吹雪に萌えます←

てか世界大会期間、勉強ってどうしてたんだろうね?
エイリア編の時は一回だけ、ちゃんと勉強もしてるげな事を円堂が母ちゃんに電話で話してたけど…(真・帝国の回で…)

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