きゅっとまとめて取り出して、何か箱にしまっておけたらいいんだけど。



眠っているんだろうか。
蔵の部屋。何をするでもなく、携帯を握って床に座ってベッドに凭れる蔵の横に座ってみたものの、蔵の左手は携帯を持ったまま動く気配がない。



「くらー…」



顔を覗き込んでみると、あ、寝てる。
すうすうと規則的な寝息をたてる嫌味なくらい整った顔。長い睫。
閉じられた瞼の奥の瞳は、どんな風に世界を見てるのだろうか。
明るいのかな。それとも暗いのかな。
広いのかな、それとも狭い?
カラフルなのか、モノクロなのか。

私は何にも見えないよ。



この気持ちを抑えることは、閉じこめることはもうできないと思う。
だから取り出して、軽くできたらいいのだけれど。
ぼこぼこと溢れてくる、きっとまたいっぱいになってしまうのもわかりきっているけれど。
溢れてくるのにずっしりと重くて、容量もあるから尚更。
ああでも取り出したらこの大切なものもなくなっちゃうのかな。それは嫌だな。


見えないのだ。もうこの人しか。
見える世界はぼんやりとベールがかかっていて、形はなくて、それからちぐはぐな色。

好きすぎる。
頭の隅の冷静な自分が、そう思った。

蔵の世界も私と同じようなんだろうか。
でも蔵は要領がいい人で、きっと一つのことだけしか見ないような人じゃないから。



「……好きだよ」



でも、こうやって隣にいるときだけでも、私だけを見てくれたらな、

なんて。


床に置かれた白い手。
その指にそっと触れてみた。



「俺の方が好き」



ふわりと包まれた手。絡まる指。

どろどろと、甘いものが流れていく。
重くてどうしようもなかったものが、溶けていく。
ふわふわと飛んでいく。
なのにすごく甘くて、暖かいよ、なんでだろう?



寝てなかったの、そう笑うと、二人でおるのに寝るわけないやん、と蔵も笑った。








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素敵企画理系愛。様に提出
ありがとうございました!





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