めしをくうもの・めでるもの



推しにいろんなものを沢山食べてほしい
そんな推しの日2022





彼はサンドウィッチを食べる時、必ず空けてから柄を見る。そして必ず右端の卵サンドから頬張り始める。
真ん中のハムキャベツサンドでも、左端のハム卵サンドでもなく、卵オンリーの右端サンドから食べる。最初はハムが好きだから後に取っておいているのかと思ったけど、この間昼に食べていた冷やし中華の細いハムはきれいに残していたから、ハムにも好みがあるのかもしれない。
なんでいつも右端の卵サンドから食べ始めるのか聞いてみたい気もするけれど、「え?なんでそんなこと聞くの?てかなんでそんなこと知ってるの?は、キモ」とか言われたら傷つくので辞めておく。僕は自衛ができる人間なのだ。

彼はスイカを食べる時、必ず指の腹だけを使って食べる。絶対に手のひらは使わず、器用に綺麗に平らげる。ついでに言うと、口の周りに果汁一滴付けない。綺麗を通り越して一種の芸当のようだけど、この間キウイを食べている時は上手く掴めなくて手のひらをベトベトにしていた。
若干機嫌が悪そうだったので、潔癖なのか聞いてみたかったけれど辞めた。「キミみたいに汚しながら食べたくないからだよ、っていうかまたなんでそんなこと聞くの?キモい」って言われているのが目に見える。
でも僕がフルーツを食べるのが上手くないことを知っていてくれたことにはちょっと驚いて、ちょっと嬉しかった。

彼は蕎麦を食べる時、必ず啜るのを途中で諦めて麺を箸で口に運ぶ。
啜る力が弱いのか、つゆがはねるのが嫌なのか、はたまた啜る音が苦手なのか。
潔癖の気があるから汚れるのを気にしているのかもしれないが、パスタを食べている今、口の周りにソースを纏いながら頬張っていて可愛い。
付いてることを教えようと思ったけど、何かに気が付いたようにさっと紙ナプキンで拭ったので、流石だと思った。ちなみに、手にも若干ミートソースが付いているが、それもまた同じように気付いてきれいに拭き取った。


「ねえ、怖いんだけど」
「なにが?」
「何か食べようとするたびに向かいの席を陣取ってくるの」
「それと?」
「何かを一心不乱にノートに書き殴ってるの」
「あとは?」
「……一口食べるたびに嬉しそうな顔するの」
「幸せそうな顔っていいよね。見てるこっちも幸せになる」
「食べにくいんだよ」
「僕の顔がよくて?」
「自意識過剰過ぎない?」
「はずれ?」
「……間違いではない」
「そんな、好きな顔だなんて、照れるじゃん」
「そんなこと一言も言っておりませんが?」
「はずれてないならあたりのようなもんだよ。好きな顔見れて幸せになるなんて、お互い様だね」
「ーーーーっ、はいはい!」
「よく噛んで召し上がれ。ねえ、カネダ」
「ん?」
「美味しい?」
「……すっごい美味しい」




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