一か八か


0801 ジャイニコの日SS

※時系列無視
(ニコが光クラブに入るが先か、ジャイボがゼラを好きになるが先か分からないので。今回は後者が先です)




盲信的なあいつが嫌いだった。狂信的なアイツが嫌いだった。盲目な一番-アインツ-が嫌いだった。


僕はゼラが転校してきた時からずっと好きだった。陶器のような透き通った白い肌に長い睫毛、風に揺れる綺麗な黒髪。物心付いた時から周囲に容姿を褒められおだてられ羨まれて育ってきた僕でも綺麗、と思ってしまうようなその姿をずっと見守ってきた。教室でも校庭でも帰り道でもその姿を自然と追っていた。からかわれようとも抵抗するどころかまるで他人事のようにあしらうその姿も、身体が弱いのか体育の授業を木陰で見学している姿も、教科書に目を落とした時に出来るまつ毛の影も全部が美しかった。けれどもそんな綺麗な花の匂いに誘われたのか、邪魔な虫がやってきた。たかが名前をあいうえお順に並べた時に一番早いという理由で一番を冠されただけのあいつは玉座に一番近く、そのあいうえお順で番号が決まった後一番遅く入ってきた僕は玉座に一番遠い。どうせそれで俺が一番だ、とか親衛隊とか言ってるあいつがどんどん可哀想になってくる。そんなのは建前で、僕はいつでも帝王の足元にいる。まるで貴族に飼われてきた猫のように一番身近にいて、他の奴らよりも大切にされてる。八番でも帝王の玉座がある台に無条件に登れるけど、あいつは一番なのにゼラにとってはただの歩兵にしか過ぎないから神聖なる台には近づけすらしない。


それなのに、僕の方がゼラに近くてゼラを知っていてゼラを愛しているのに、ニコは目を輝かせて他の景色をシャットアウトしてゼラだけを見続けて追い続ける。いつだって何かをする時はゼラが喜ぶことが最優先、ゼラを想定していることが前提、ゼラに認められるためだけに動く。ゼラゼラゼラゼラ………もうノイローゼになりそうだった。僕のゼラを追わないで欲しい、話しかけないで欲しい、近づかないで欲しい。いっそゼラに嫌悪感を抱けばいいんだ。ニコから嫌いになればいいんだ。そんな矢先、僕にチャンスが訪れた。ゼラがライチの右目は本物の人間の眼を使いたいと言った。これでゼラが親衛隊だなんだって理由を付けてニコを指名すれば、絶対服従の盲目ニコは例え嫌でもゼラのためにその眼を差し出すだろう。案の定、僕がそんな風に仕向けるために色々と吹き込んだら、ゼラはニコに向かって言うつもりだと言った。ただ、それだけじゃ足りない。もっと何かトドメを刺さなければ、諦めずにまたゼラを追う。だから僕は、帝王に身を捧げることがどれだけ苦痛と犠牲を伴うかを思い知らせることにした。


「そのマシンは機械であって機械ではない。真理を見つめる本物の目が必要だ。右目は人間の眼球を入れたい」
「この中に右目を提供してくれる者はいないか?」


皆が無理無理とざわつく中、やっぱりゼラの頼みならばとでも言うように眼を捧げることにしたニコは覚悟を決めた顔つきをしていた。気に食わない、そもそもたかだかロボットのためだけに2つしかない眼の片方をくれなんて言う奴を全肯定するなんておかしいでしょ。それが例えゼラだとしても、少しは迷いの色を見せるでしょ??どうしてそうもまっすぐに気持ちをぶつけられるの??そんな盲信的な感情を抱くニコへの苛立ちは頂点に達していた、がしかしそれもあっという間だった。麻酔注射を待ちギュッと目を瞑ったニコは見ものだった。痛みに耐えて自らを犠牲にすることでゼラの一番になれると思ってる可哀想なニコ。一瞬、ほんの一瞬だけ何故か躊躇ったけど、構わず僕は左目に麻酔を注射した。タミヤがすぐに気付いたけれどもう遅い。ゼラにまとわり付くニコが悪いんだよ??わざとやったな、なんて凄い形相で見てきたけれど当たり前じゃん、僕に楯突いてゼラを奪おうとした罰だよ。もちろん計画に忠実なゼラが予定から大きくずれることを許容するわけもなく、結局あいつは血塗れになりながら激痛を伴いながら自ら右目を抉り出した。まさか、本当に片目を犠牲にするなんて思ってもみなかったからちょっとだけ血の気が引いた。それと同時にこの苛々悶々とした気持ちの理由に気付いた。きっとそれは帝王のためならば全てを犠牲にする覚悟のあるニコの犠牲心への悶々とした思いと、それが出来ないでいる僕自身への苛立ちだということに。




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