運命のいたずらは手紙と共に


0602 タミ雷の日SS

※タミ雷ではなく雷ちゃんです。
※博くんは名前しか出てきません。
※カネダとゼラさんが友情出演しています。
※高校生想定で書きました。
が、中学生でも問題ありません。
※博くんは他校設定です。
※完結してません。ので、
どなたか心優しい方、続きを書いてください(土下座)








運命が神様のいたずらなら、神様はとんだ悪者だわ。まさか自分の人生のこんな時にこんな出会いが待ってるなんて思いもしないじゃない、大好きな人に書いたラブレターを無くした最悪の日になんて。趣味が悪いわ。





春うらら、清々しい天気に暖かな陽気。何をやってもうまく行きそうなこの春の日、周りの空気とは裏腹に私の血の気は一気に下がった。


「なっ………なんで………」


寝る間も惜しんで慎重に言葉を選び、大好きな人にありったけの気持ちを込めて書いた恋文。字を人生で一番綺麗に丁寧に、間違いなんて決してないように注意して、完璧にかけた渾身の出来だったラブレターだったのに。


「なんで……無いの………」


家に起き忘れたわけはない。朝確実に手に持って来たんですもの。手に持って来た………


「馬鹿じゃないの私!?なんでそんな大事なもん裸で持ってんのよ!?普通大切にしまっておくでしょ!?」


乙女の嘆きより猛獣の雄叫びと言った方が表現が正しい叫び声を上げた私の方をクラスメイトが注目する。こほん、と咳払いをしてなるべく落ち着こうとしたけど、そんなの無理。誰かに拾われたら??誰かに見られたら!?しかも同じ学校の人だったら……!?


「ご丁寧にクラス番号名前まで書いてあるのに………」
「どうしたの??雷蔵」
「カネダ……」


雄叫び(嘆きよっ!!)を聞いて私の挙動不審さに気付いた同じクラスのカネダが心配してくれた。あんたはいいわね、恋して悩める乙女じゃ無くて。


「さっきすごい声聞こえたから何事かと思ったけど、無くしもの??」
「えぇ、拾われたら人生が終わるものよ」
「えっ、なに落としたの!?」
「男のあんたが貰ったら嬉しいものよ」
「えっ………お金??」
「あんた意外と現金ね。恋文よ」
「えっ、雷蔵好きな人いたの!?」
「ばっ、声でかいわよ!!」
「痛った!!」


あまりにも声のでかいカネダに可愛いつっつきをしたら少しは元気が出たけど、やっぱり考えはどんどん嫌な方向に向かっていく。(ラブレター落としたことより好きな人云々の方に驚くのね……可愛いわカネダ)


「どうするの??どこに落としたか心当たりはある??雷蔵の好きな人って誰??」
「もちろん探しに行くわよ。朝通った道を片っ端から探すわ。そしてどさくさに紛れてなに聞いてんのよ」
「えへへ、気になっちゃって……もう授業無いし、探しに行くなら早く行った方がいいよ」
「そうするわ。誰かが私を探してたら、人生を成功に導きに行ったって伝えといて頂戴」
「誰も聞かないと思うけど、一応言っとくね」
「言うじゃない、じゃあ……」
「雷蔵ー常川君が呼んでるよー」
「それところじゃな……えっ!?」
「体育祭のことで話があるんだってー」
「ちょ、どうするの雷蔵……」


常川君が……呼んでる!?クラスも違うし合同授業も無いし、友達も少なめだから滅多に見ること無い常川君が私と話!!……あぁ、でもラブレターが……もう、神様のばかっ!!


「ごめんなさい、常川君に人生を成功に導きに行ったって伝えて頂戴!!」
「はぁ〜っ!?」


ラブレターを渡そうとしてる相手と話せるなんて、これは手紙を落としちゃった可哀想な雷ちゃんへの神様からのお詫びかしら??でも今この幸せを享受しちゃったら、この先私はこの町に住めないかもしれない……このチャンスは二度と訪れないかもしれないけど、見つけちゃえばこっちのもんよ!!それからでも話すのは遅くないわ!!


なんて心の中でポジティブシンキングになろうとしながら朝来た道を必死に戻る。あの橋を渡って、あの大きなお家の横を通り過ぎて、細いけど近道な路地裏を通って……


「無いわねぇ……もうこれは市橋家最大の引越しになりそうだわ。誰も私を知らない遠い見知らぬ土地にでも行きましょう……海外なんかいいかもね、ふふふふふふ……」


半ば呪詛めいた呟きを漏らしながら路地裏を歩いて行くと、にゃあ〜と可愛い鳴き声が聞こえてきた。いつも朝から塀の上で寝ている野良猫だった。


「いいわねぇ、猫ちゃんは呑気で。私は今から遠い地に行こうとしてるのに。これから毎朝の日課だった雷ちゃんからの挨拶はもう今日で最後よ」


そんなの知ったこっちゃないような猫ちゃんはちらっとこっちを見た後、また呑気に欠伸をした。もう、今なら猫になりたいわ。そんな諦め気味な気持ちで塀を少し見上げた私の視線にふと飛び込んできたのは、昨日全神経を研ぎ澄ませて書き上げた、あのラブレターの入った封筒だった。驚きと安堵の入り混じった複雑な気持ちを堪えて封筒をめくってみる。そこには、うまくいきますようにと願って貼った真っ赤なハートのシールがあった。


「よっ………よかった………」


ただ、唯一不安だったのは、そのシールに剥がされた跡があったことだ。中に手紙は入ってる??いたずらされてない??そんな恐怖を打ち砕くように思い切ってシールを剥がしてみる。中には昨日入れたままの形で収まった手紙があった。どうやら、開けてはみたけど手紙が入ってたからそのまま戻したか、それとも読んだけどまさかのラブレターだったから気まずくなって元に戻したか。どっちにしろ、この手紙が手元に戻って本当に安心したわ。中身が読まれて言いふらされても、証拠が提示出来なければこっちのもんだわ。よれてしまったシールと封筒を新しいものに変えなくちゃ、なんて中の手紙だけ取り出したら、そこには小さな白いメモ用紙が入っていた。こんなの入れた覚えがないわ??きっと拾った人からの脅迫文でも書かれてるんだわ。黙っててやるから言うことを聞け!!みたいな。そんな奴相手にするもんですか、なんて思ってはいるものの、好奇心が勝った私は思わずそのメモを開いた。




運命が神様のいたずらなら、とんだ悪者だわ。走り書きじゃ無くて、もっと綺麗な字で欲しかったわ。





「勝手に手紙を読んでごめん。
とても素敵な表現だった。
この手紙の受け取り主は幸せ者だな。 田宮博」




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