僕は君の目


0601 タミニコの日SS


その傷に触れるとあぁ、もう二度と光は入らないんだな、と悲しくなる。そこにはもう何もなくて自分の姿も映らないという事実に過去を呪った。あの時死ぬ気で思いとどまらせていれば、ニコは目を失わなかったかもしれない。でも俺にはそれが出来なかった。ゼラを盲信して麻酔薬を打ってない右眼を自分で抉り出して捧げるまでの忠誠心を持ったニコを、ひかりクラブを奪われても何も出来なかった俺が止められるはずもなかった。そんな後悔を今更しながら教室で待ちくたびれて眠ってしまったニコの右眼の傷をそっとなぞる。くすぐったかったのか、少し身をよじってからゆっくりと目を開いた。


「悪り、起こしちまった」
「タミヤ……遅いぞ」
「待たせたな、帰ろうか」
「あぁ」


そう言って立ち上がったニコを見てもその右眼は俺を映さない。今後一生、その目に光が灯ることはない。それでもいい。これからは俺がニコの右目になろう。俺が右目で見た景色をニコと一緒に分かち合おう。


「ニコ」
「なんだ??」
「いや、何でもない」
「なんだよ、訳わかんねぇな」


しかめっ面になりながらも俺と同じペースで歩くニコをとても愛しく、そして切なく思った。だから俺はこうしてこれからもずっと隣にいて、ニコの右眼に光を灯していこう。例え彼の残された左眼に俺ではなくゼラが映っていようとも、その心が盲目であろうとも。





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