「別に、難しく考える必要はないんじゃない。言っちゃえばいいんだよ、そのひとに」
「んー……」
英二はそう唸って、唇に指を当て眉を寄せた。

まさか、まさか。
自分が彼の恋愛相談を受けるなんて思ってもみなかった。

好きなコがいるけど、男として見てもらえないんだ。いつもは見せない真剣な顔つきで英二は言った。
わたしはその表情と声に、胸がきゅ、と締め付けられて、英二にそんなふうに思われているコがうらやましいな、と思った。
痛い。痛過ぎる。

「言ってみたら意識してもらえるかもしれないよ」
「でもフラれるんだって、絶対。男として見られてないんだぜっ?」
「……そのひとに特別好きなひとがいなければ、待ってればいいんだよ。なんにもないより、意識してもらったほうがいいでしょ、英二だって」
ああ、こんなことになるのなら、わたしも言えばよかった。
そして少しでも意識してもらいたかった。
好きなコがいる気配なんて全くなかったから油断していた。
「あ、そっか」
英二はそうだよにゃ、と言ってわたしに向かってニッコリ笑った。
「そうそう……」
もうわたしはその顔を見ることも出来ない。視線をそらして窓の外を見る。

どうして英二の恋の手伝いをしてしまうんだろう。どうやら背中を押してしまった。
これが、惚れた弱みってやつなんだろうか。いや、違う気がする。
「美月。美月、こっち向いて」
「なに?」
わたしは最悪なテンションのまま、顔を上げた。
英二はとても機嫌が良さそうに笑っている。
「え……なに」
訝しく思って見つめると、英二が口を開く。
「美月、好きだよ」






no title(菊丸英二)
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