椅子に座って机に肘を付き、ベットを眺める。一昨日までは毎日のように美月が座っていたベットだ。
英語の宿題をやらなければと思うのに、どうしても気がのらない。集中出来ない。一昨日美月に向かって「邪魔だから出てけよー」なんて言いながら、数学の宿題をしていた時よりも、もっと集中出来ない。

昨日、俺には突然彼女が出来た。同じクラスの女の子で、きっと美月の次に仲がいい女子だ。告白されて、やっぱりそれはうれしく、OKしたのだった。
美月がうちに来たら一番に教えてやろうと思っていたのに。彼女が出来た、と、自慢してやろうと思っていたのに、噂は瞬く間に学年中に広まったらしく、気が付いたらクラスの連中はみんな知っていて、テニス部のやつらも知っていて、美月と同じクラスの大石によると、どうやら美月の耳にも入っているらしい。
驚かせるつもりでいたので少し残念に思ったけれど、自慢してやるつもりでいたのだ、俺の部活が終わるまで待っていた彼女を家まで送り届けて、自分の家に帰ってくるまでは。
へとへとになりながら玄関のドアを開けて、それでも美月のサンダルがないことに気が付いた。いつも美月が履いてくるピンク色の、ミュールとかいう、サンダルだ。美月が来ていない。
ほとんど毎日来ているとは言え、本当に毎日うちに来るわけではないので、昨日は大して気にも留めずに、ただ自慢出来ないのが残念だと、それだけを思っていたのだけれども。

今日も来ない。おかしい。日曜日だって気にせずにうちに来ていた美月なのに、おかしい。二日連続で来ないことなんて今までになかった、はずだ。
俺何かした? と、ベットを見つめながら、ここにいない美月に問い掛ける。なんだか胸に重たいなにかがつっかかって気持ちが悪い。それが何なのか、俺にはさっぱりわからないのだ。




君はこの部屋の一部だったのに


君はこの部屋の一部だったのに(菊丸英二)
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