※タイ啓前提でタギ→タイ
※タギルの失恋話です


『俺と啓人は付き合ってるんだ』

 ついさっきの話だ。偶然目撃してしまった2人のキスシーン
 タイキさんは真剣な顔で告げた言葉。

 頭が真っ白になった。

 なんで?男同士だから?
 別の世界の住人に恋したから?
 分からない。分かんねぇよ、なんだよこの感じ

 もやもやして、気持ち悪い。

 いまのままじゃ絶対タイキさんにも啓人にも酷い言葉を言ってしまう
 俺は逃げるように拠点の自室に籠った。

「……俺は、どうしたいんだ…?」

 タイキさんと啓人が付き合ってる。その現実はすんなりと受け入れてるはずなのに
 何かが、何かが俺の中で否定している。拒絶している。

「なにを否定してんだ?タイキさんも啓人も冗談で付き合うなんてことしない」

 2人とも、本気で…

「あれ?…え、なんで…あれ?」

 勝手に流れ出す涙。
 何度拭いても止まらない。どうしちまったんだよ

「止まれ、止まれ止まれ…っ、頼む、止まってくれ…ッ!」

 マジどうしたんだよ俺。タイキさんに恋人が出来たからって何だって言うんだよ
 相手がアカリさんじゃないのは驚いたけど、変わらないだろ?
 タイキさんが選んだ人。タイキさんが望んだ人。それが俺じゃないってだけで…

「…へ、俺、いま…なに、考え…?」

 俺は憧れのタイキさんを越えたい。
 もっと俺を見て欲しい。
 もっと俺を気にして欲しい。

「う、そだろ…、ははっ、なんだよ…それ…ッ」

 ひとつの答えが導いた瞬間、完全に涙線崩壊した。
 涙が滝のように溢れ出て来た

「タイキさん…ッ!」

 気づいてしまった。しかも最悪のタイミングで
 タイキさんのこと好きだったんだ。憧れの感情がいつのまにかそれを飛び越えていたんだ

「はは、だっせぇ…気づいた途端、失恋とか…馬鹿だろ俺…
 なんでいま気づいちまうかなぁ…」

 流れる涙を拭うことを放棄した俺はただただ薄暗い部屋を眺めていた
 茫然ともしもっと気づくのが早かったら何かが変わっていただろうかと考えだす。
 けど仮にそうなっても、タイキさんは俺を選ばないだろう。

 確証も根拠もないけど、何となくそう思った。

 きっとこの形でいいんだ。憧れで目標でいつか越える存在。
 これでいいんだ。きっと…

 コンコン

「…タギル、飯、出来たぞ?」

「タイキさん…」

 なんでこのタイミングで来るかなぁ。
 向こうも気まずそうな雰囲気でてっけどさ

「ごめんなさい、今日はちょっと食欲ないんでパスします」

「……わかった」

「タイキさん、ひとつ聞いていいですか?」

「なんだ?」

「啓人のこと、本気で好きですか?」

 一瞬息が詰まった音がする。

「あぁ。本気で好きだ」

「そっかぁ…」

 ちくしょう、また涙流れて来た。おさまったと思ったのに

「完敗だな」

「タギル?」

「幸せになれって言ったんですよー」

 認めるしかない。自分の気持ちと現実を

「…タギル、ありがとうな」

「泣かしたら承知しませんから」

「あぁ、絶対しない。…腹空かせたらいつでも来いよ」

 そう言うとタイキさんは扉から離れて行った。
 静寂に戻った部屋、心地よいと思える薄暗さ、扉の向こうからは太一さんたちのがやがやと賑やかな声が聞こえてくる

「今日くらいいいよな…」

 目いっぱい泣いて、恨んで、悔んで、後悔して
 自分の中にあるドロドロとしたもん全部流し出すように泣いて
 そんで明日からまた、いつもの明石タギルになるんだ。

「お前が羨ましいよ啓人。幸せにならねぇと許さねーからな」


さよなら恋心
また明日
以前失恋ルートから理解ルートにシフトチェンジしてしまったので、リベンジ。こんな潔く受け入れる奴は早々いねぇだろというツッコミはしないで…


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