「ハァ、ハァッ、ゼェ、ハァハァッ!」


 無我夢中で走った。気がつくと拠点付近にある大樹の根で座り込んでいた
 必死に呼吸を整えながら、ついさっき見てしまった光景を思い出す


(タ、イキさん…と、啓人が…キス、して、た…?)


 本当に偶然だった。
 少し離れた先に2人がいて、いつものように声かけようとしたら、タイキさんが啓人に…!


(あ、あんな大胆なタイキさん初めてみた)


 違う、そこじゃない。論点がズレた
 タイキさんと啓人は恋人関係だったんだ。
 俺が今まで鈍感で気づかなかっただけかもしれねぇけど、公表してないってことは秘密にしたいってことだよな


(どうしよう、俺…これから2人にどんな顔して会えばいいんだ)


 自他共に認めるほど俺は嘘が下手くそだ。つーか顔にでる。
 そしてタイキさんは勘が鋭い。驚くほどに
 

「………頭冷やしに川行こっかな」

「昨日の大雨で川の水位が上昇してるから近づくなって言ったよな?タギル」

「へッ!?た、タイキさん…!?」


 ちょ、さっきまで啓人と一緒にいましたよね!?


「物音がしたから追いかけて来たんだよ」


 心読まれてる!?


「あ、あはは…」

「…見たんだな」

「な、なにをですか?」

「俺が啓人にキスするところだ」


 睨みつける、じゃないな。真剣な眼差しで俺をみている。
 この状況でとぼけろと言う方が無理って話だ


「…はい。スミマセン」

「別にタギルが謝ることはないだろ
 俺が誰かに見られてもおかしくない場所でやったのが悪い
 …タギル、もう気づいていると思うが俺と啓人は付き合っている」


 男同士の恋人関係。本当にそういうことが起きるんだな


「気持ち悪いって軽蔑していると思うが、俺たちは…」

「え、ちょっと待って下さいタイキさん。俺一言も気持ち悪いなんて言ってませんけど」

「あぁ、そう思うのが当たり前……って、え?」



 ………。
 

 数秒間たっぷり沈黙が続いた。



「だから、気持ち悪いとか軽蔑してるとか、俺は一言も言ってませんし思ってません」

「いやタギル?確かに啓人は可愛いが列記とした男だぞ?」

「知ってますよ。てかさり気なく惚気ないでください」

「…男同士だぞ? 気持ち悪いと思うに」

「思ってませんってば!」


 そうだ。確かに俺は目の前のキスシーンに驚いて走って逃げてきた。
 そして2人の関係に気づいた。けど、嫌悪感や軽蔑は全く生まれなかった
  
 俺は知っている。タイキさんが何事にも本気で全力で取り組むことを、啓人だって流されない芯の強い部分があることを
 そんな2人が関係を結んでるんだ。遊びなわけがない。本気なんだ


「タイキさん、啓人とは本気で付き合ってますよね?」

「当たり前だ」

「なら、俺は絶対2人を軽蔑しませんよ。
 俺は何かに本気でのめり込んでる人を嫌悪するなんて絶対しません」

「タギル…」

「安心してください、俺は2人の味方です!」



心強い味方
それでどっちから告白したんですか?やっぱタイキさん?
おま、切り替え早いぞ!?

本当はタギル失恋話だったけど、気がつけば理解者ルートになってました。


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