俺は深い夢を見ていた。



大きくて広くて果てのない、海に浮かんでいる夢




最近はめっぽう姿を見せていたなかった夢だ。



あたりを見渡しても、砂浜も、崖も見えない


ただ、蒼く広がる海と空だけが俺を包んでいた。




俺はこれから、バレーを続けていくことが出来るんだろうか


壊れた脚、戻らない脚。

また、先生に怒られちゃうんだろうな・・・
それから徹さんにも怒られるだろうし、
あぁ、そうだ。一さんのほうが怒るかなぁ


きっと、わたちゃんには笑われてしまうだろう


先輩たちはしょうがねぇなぁって、言ってくれるだろうか

国見や金田一は二回目だからまたですか、って呆れるのだろうか



そうだ、影山との約束、果たせなかったなぁ・・・
きっと、もうどれだけ約束したって、叶えてやることは出来ないのかもしれないね





俺だって、願うならばもう一度、高く、速く飛んでみたい






「ぅっ・・・ヒクッ・・・助けて・・・!」




ふと、声がする方へ浮かんだまま顔だけを向けると、


そこには俺がいた。



泣いている。






そうか・・・このどこまでも果てしない海は君が、

いや、俺がためてきた涙なんだ


助けて、助けてと何度もすがって泣く自身の涙はどんどんと海にかさを増していく




飛べないと知ったとき、バレーを続けることが難しいと知ったときからきっと、


君はずっとこうして涙の海を形成してきたんだね





水中で起き上がり、自然に歩けることに少し驚いたが所詮は夢だと思い出し、自身と向き合い頭を撫でる。




「この海は君が創ったんだね」

「僕は・・・もう飛べないんだ・・・!いらなくなったんだ・・・っ」

「うん、ごめんね、俺のせいだ」




拭っても止まらない涙を見て、本当の俺はこんな姿だったのかと気づく。

どこか、心の中ではいつも泣いていたんだ



一さんや、みんなが飛んでいるのをみて、心のどこかでは羨ましいと思い、

影山のトスを難なく飛び回っている翔陽を見て、嫉妬をした。



そのたび、この海は広がり、深くなっていく




「ごめんね・・・もう、いいよ。俺たち、一緒に沈もうか。」



君の、俺の涙が、誰にも見つからないように。






そうして、俺たちは手をつないで、沈んだ。





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