「徹さんー?鍵ちゃんとしめましたー?」

「あー、体育館のほうしめてない!」

「俺しめてきますね。」

「うっそ、ごめん!!ほんとありがとうねー」



後輩遣わしてんじゃねぇよ!!と一さんのとげとげの罵り声と背中をドカンと殴る音といてっと情けない声がほぼ同時に聞こえてきたのを流して鍵を握って体育館へ向かっていった。



歩いていてもじわりと汗が滲む昼とは一変、夜になると涼しくなるこの季節が俺は結構好きだったりする。


歩くたびじゃらじゃらと鍵が鳴るのが逆に不気味で少し早足で体育館へ向かうことにした。




体育館へ着き、きっちりとすべての鍵がかけられたか確認をしてから再び徹さんのいる部室へと歩いた




「いやー、ごめんね!」

「いえ、大丈夫ですよ。帰りましょうか」



既に支度を済まして俺の鞄も持って外で待っていた徹さんから鞄を引き取り、二人並んで歩き出した。


明日からいよいよ大会。

徹さんたちは強敵である牛島若利を倒すべくかなり前から気合いが入っていた



知ってか知らずか、いつもより徹さんは口数が多かった。
普段ですら口がよく動いているというのにこれほどまでにしゃべると俺の相槌もほとんど意味をなしていない




「明日こそ、絶対倒してやるんだから・・・!」

「徹さん、決勝は明日じゃないですよ」

「うぐ・・・!?わ、わかってるし!!明日から気持ちつくるってことだし!!」

「はいはいー。」



適当な返事をしているとてっぺんから頭を掴まれる。
痛い。この二文字以外のなにものでもない

俺の頭をバレーボールかなにかと思っているのだろうか、力加減が間違っている



「ったく!減らない口だなぁ!」



誰のことだか。

心の中でそっとつぶやく



分かれ道についたので一言挨拶しようとすると徹さんは両手を広げていた。

・・・何か宣言でもするのだろうか。と一人その格好の意味を考え首をかしげていると本当に夏芽ちゃんはバカだなぁ!と一言、俺の腕をぐっと引っ張って徹さんの胸の中へ収まった



「・・・徹さん?」

「充電。もうちょっとこのままでいて」



そっと徹さんの背中に手を回すと服を着ていても伝わる、心臓の動く音。


すごく、早かった



きっと、努力をたくさんした人は人一倍緊張するのだろう

今までの努力が報われますように、とらしくもなく神様なんかに頼んでみたりした




「よし、完了〜」

「徹さん」

「ん?」



街灯に照らされた影は静かに重なった



伸ばした足がふるふるとしている
唇で触れたおでこは外気にさらされてひんやりとしていた



「おまじない、です」

「・・・はは、なにそれ、超頑張れる」




わしゃわしゃと頭を撫でられぐちゃぐちゃになった髪を直す暇もなく明日頑張ろうね〜とお気楽な声が聞こえてくる



「・・・はい、また明日」

「うん、じゃぁね」



大きな背中が見えなくなるまで見送り、空を仰ぎながら家路についた



たくさん勝って、オレンジコートに立てますように、と何度も何度も心の中で祈ってみた





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